ガザ人質「衰弱映像」が波紋:停戦交渉の行方と家族の切実な訴え

イスラエル人の人質家族らは、パレスチナ自治区ガザ地区で拘束されているイスラエル人質が衰弱した姿を捉えたプロパガンダ映像の公開を受け、テルアビブの「人質広場」で緊急抗議集会を開催した。この衝撃的な映像は、ガザでの停戦と人質解放を巡る交渉の停滞、そして深刻化する飢餓の危機を改めて浮き彫りにしている。

ハマス公開「衰弱映像」の衝撃と人質の現状

イスラム組織ハマスと武装組織「イスラム聖戦」がそれぞれ公開した映像には、人質のエビヤタル・ダビドさんとロム・ブラスラフスキさんが登場し、撮影日は不明ながら両者の衰弱した様子が克明に記録されていた。特にダビドさんの映像は、飢餓に苦しむパレスチナの子どもたちの映像と並置され、国際社会に強い衝撃を与えている。現在、ガザには少なくとも50人のイスラエル人質が拘束されているとみられ、そのうち20人以上が生存していると考えられている。

停滞する交渉と米国特使の介入

ガザでの停戦と人質解放を巡る交渉は長期にわたり停滞し、現地では飢餓の危機が深刻化の一途をたどる。米国中東担当特使のウィトコフ氏は、ガザ地区内の米国支援による物資配布拠点を視察後、テルアビブで人質家族約40人と「非常に感情的な会合」を行った。ウィトコフ特使は会合で、交渉は「すべてかゼロか」の方式で進めるべきであり、50人全員を同時に帰国させることが唯一の道だと強調。もし人質が生きて戻らなければ、誰かが責任を問われることになると述べたという。

人質家族の切実な訴えと大規模デモの拡大

人質家族らは、ガザでの戦闘継続が人質の命を危険にさらすとして、繰り返し即時停戦と包括的解決策を求めてきた。衝撃的な映像公開を受け、2日には数万人がイスラエル各地で人質解放を訴えるデモに参加。家族らはテルアビブ中心部で声明を発表し、「私たちの愛する人たち、そして私たち自身の目を見てほしい」とイスラエル政府と米政府に訴えた。ブラスラフスキさんの父オフィールさんは、映像で息子を見たときの衝撃を語り、「息子はパンに飢え、水に渇き、病気で、心身ともに打ちのめされている。我が子は死にかけている!」と痛切な言葉で訴え、ネタニヤフ首相に段階的な交渉の失敗を指摘し、戦争を終わらせ、人質を帰還させる決断を強く求めた。ダビドさんの兄弟イライさんも、ダビドさんの扱いを「人間としての基本的な良識のかけらもない残忍で野蛮な攻撃だ」と非難し、イスラエル政府と米国のトランプ大統領に対し、人質救出のためにあらゆる手段を尽くすよう呼びかけた。

ガザで拘束され衰弱したイスラエル人質のエビヤタル・ダビドさん(左)とロム・ブラスラフスキさん(右)の姿が映るプロパガンダ動画の公開に、家族が衝撃を受けているガザで拘束され衰弱したイスラエル人質のエビヤタル・ダビドさん(左)とロム・ブラスラフスキさん(右)の姿が映るプロパガンダ動画の公開に、家族が衝撃を受けている

ネタニヤフ首相は同日夜、人質家族らと面会し、ハマスなどが公開した映像に「深い衝撃」を受けたと述べた。首相は、人質全員の帰還に向けた取り組みは続いているとも語ったという。人質家族の切実な叫びと国際社会の懸念が高まる中、ガザの地で囚われの身となっている人々の命を救うための、より具体的かつ迅速な行動が強く求められている。

出典:CNN (https://news.yahoo.co.jp/articles/51543102a98c1b7ad7d86270b4ec9b7cfe07a93f)