参政党記者会見での記者退出問題:メディアの「説得力」と少数政党への姿勢

2025年7月22日に国会内で開催された参政党の定例記者会見が、メディアの注目を集めています。この会見で神奈川新聞の記者が、当初「事前登録がない」として参政党スタッフによって退出を求められたものの、2日後のプレスリリースで異なる理由が明らかにされたためです。この一連の動きは、報道の自由と政党の対外発信におけるメディアの役割について、改めて議論を巻き起こしています。

メディアと政治の関係性を示すTBS本社ビル外観。2025年4月26日、東京都港区で撮影された共同通信社の提供写真。メディアと政治の関係性を示すTBS本社ビル外観。2025年4月26日、東京都港区で撮影された共同通信社の提供写真。

参政党が神奈川新聞記者を退出させた経緯と理由の変遷

参政党は、当該記者が参院選期間中に「大声による誹謗中傷などの妨害行為に関与していたことが確認されている」と主張しています。そのため、「今回の会見でも混乱が生じるおそれがあると判断し」て退出を促したと説明しています(参政党ウェブサイト「お知らせ」2025年7月24日付「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」)。当初の「事前登録」という理由から一転、具体的な「妨害行為」を根拠としたことは、この問題の複雑さを浮き彫りにしています。

毎日新聞社説による批判とその「説得力」への疑問

この参政党の対応に対し、毎日新聞は社説(2025年8月4日付「参政党の記者排除 知る権利を軽んじている」)で「説得力を欠く」と厳しく批判し、「報道機関の自律性を軽んじる参政党の姿勢がうかがえる」と指摘しました。社説は、「報道の自由と知る権利の保障は、民主主義が機能するための基盤である。恣意的にメディアを選別するような振る舞いは決して許されない」と結論付けています。

一方で、参政党もまた、「報道の自由と国民の知る権利を尊重しつつ、健全な言論空間と秩序ある情報発信に努めてまいります」とウェブサイトで表明しており、両者の主張は一見すると共通しているように見えます。しかし、毎日新聞は自社の主張に「説得力を持つ」と考えているのに対し、参政党のそれは「説得力を欠く」と断じています。この「説得力」の有無を誰が、どのように判断するのか、という点が、本件の核心的な問いとなります。

少数政党に対するメディアの「姿勢」がもたらす影響

このようなメディアの「姿勢」こそが、これまで参政党に勢いを与え、現在もその影響を与え続けている可能性が指摘されています。毎日新聞の表現を借りれば、「少数政党の自律性を軽んじるメディアの姿勢がうかがえる」と言えるかもしれません。

今回の選挙で議席を伸ばしたとはいえ、参政党は参議院で15議席、衆議院で3議席に過ぎない少数政党です。その少ない議席数ゆえに軽んじるべきだというのではなく、むしろメディアが参政党の行動を「言論弾圧」であるかのように「過大視」しているのではないか、という見方もできます。少数政党に対するメディアの向き合い方が、彼らの発信力や支持層の形成に意図せず影響を与えている可能性を、報道機関は再考する必要があるでしょう。

今回の件は、メディアが多様な政治勢力とどのように向き合い、国民の「知る権利」と「健全な言論空間」をいかに担保していくかという、民主主義の根幹に関わる重要な課題を提起しています。


参考資料