南ア大統領、TICADで日本との連携強化を語る:米関税問題の逆境を好機に

アフリカ開発会議(TICAD)参加のため来日した南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は21日、毎日新聞などのインタビューに応じ、米国との貿易摩擦が続く現状において、「日本の大手企業経営者らと相次いで面会できたことが、今回の最大の成果の一つだった」と強調しました。これは、南アフリカが経済関係の多角化を模索する中で、日本との連携に大きな期待を寄せていることを鮮明に示しています。

日本企業との経済連携を重視する南ア大統領

ラマポーザ大統領は今回の来日中、約20社の日本企業経営者らと集中的に会談し、意見交換を重ねました。TICADに合わせて開催されたビジネスフォーラムでは、約30分間にわたり熱弁を振るい、日本市場への関心と南アフリカへの投資誘致の意欲を強くアピールしました。これらの積極的な行動は、南アフリカが日本の技術力や投資を自国の経済成長に取り込みたいという明確な意思の表れです。

アフリカ開発会議(TICAD)サイドイベントで演説する南アフリカのラマポーザ大統領アフリカ開発会議(TICAD)サイドイベントで演説する南アフリカのラマポーザ大統領

米国との関税問題と「逆境の中の好機」

南アフリカは、主要な貿易相手国の一つである米国との間で、ドナルド・トランプ大統領から30%の関税を課されるなど、困難な通商関係に直面しています。トランプ氏は、南アフリカ国内での少数派の白人に対する「虐殺」といった一方的な主張を展開し、今年11月に南アフリカで開催される主要20カ国・地域(G20)首脳会議への欠席も示唆するなど、両国関係の冷え込みは顕著です。このような状況の中、ラマポーザ大統領は英語のことわざ「どんな雲にも銀の縁取りがある(Every cloud has a silver lining)」を引き合いに出し、「困難な状況の中にも必ず好機がある」と説明しました。輸出先の多角化を推し進めた結果、「新たな市場の扉が開きつつある」との認識を示し、日本企業から多数寄せられている自由貿易協定(FTA)締結への要請に対し、前向きに検討していく姿勢を明らかにしました。

中国と日本、公平な関係構築への姿勢

大規模な投資を続ける中国と日本の関係性について問われた際、ラマポーザ大統領は「どちらの国も我々の大切な友人で、国に優劣をつけるつもりはない」と述べました。さらに、「南アフリカに投資してくれる全ての国を歓迎する」と強調し、特定の国に依存せず、多角的なパートナーシップを通じてバランスの取れた外交関係を構築していく方針を示しました。これは、国際情勢の複雑化の中で、南アフリカが戦略的な中立性を保ちながら、自国の国益を最大化しようとする現実的なアプローチを反映しています。

アフリカ開発会議(TICAD)がもたらす展望

今回のTICADにおいて、日本政府がアフリカ域内の関税撤廃による競争力強化を目指す「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」の促進を提唱したことに対し、ラマポーザ大統領はアフリカ全体の成長を後押しする日本の積極的な方針を高く評価しました。また、石破茂首相との会談についても「日本とのパートナーシップを一層深める貴重な機会となった」と振り返り、一連の来日活動を「大成功だった」と結びました。TICADは、南アフリカだけでなく、アフリカ大陸全体の持続可能な発展に向けた日本とアフリカ諸国との協力関係を強化する重要なプラットフォームとしての役割を果たしています。

参考資料