フロリダ州、パルス事件追悼のレインボー横断歩道を黒塗りに – 政治的との批判が波紋

米フロリダ州オーランドで、2016年のゲイナイトクラブ「パルス」銃乱射事件の犠牲者を追悼するために設置されたレインボーカラーの横断歩道が、州当局によって黒塗りに変更されました。この突然の措置に対し、州知事らが「政治的」と批判的な見解を示す一方、地域コミュニティや一部の政治家からは「残酷な裏切り行為だ」と強い反発の声が上がっており、全米で波紋を呼んでいます。

パルス銃乱射事件とレインボー横断歩道の背景

2016年6月、オーランドのゲイナイトクラブ「パルス」で発生した銃乱射事件は、多数の性的マイノリティを含む49人の命を奪い、当時としては米国史上最悪の銃乱射事件として深い傷跡を残しました。この悲劇の後、事件現場のクラブ前にある横断歩道は、犠牲者への追悼の意とLGBTQコミュニティの象徴として、鮮やかな虹色に塗られました。このレインボー横断歩道は、単なる道路標識ではなく、コミュニティの痛みと回復、そして連帯を示す重要なシンボルとして、多くの人々に受け入れられてきました。

オーランドのパルス事件追悼レインボー横断歩道、黒塗りされる前の鮮やかな色彩オーランドのパルス事件追悼レインボー横断歩道、黒塗りされる前の鮮やかな色彩

当局による黒塗り化と政治家の反応

レインボー横断歩道が黒く塗りつぶされたのは、8月21日未明、フロリダ州運輸局(FDOT)の指示によるもので、一夜にして一般的な白黒のデザインに戻されました。この決定に対し、複数の政治家が賛否両論のコメントを発表し、議論が巻き起こっています。

ショーン・ダフィー元米運輸長官は今年7月、交通安全強化を求める書簡を全州知事に送付した際、自身のSNSで「納税者はレインボーの横断歩道ではなく、安全な道路に資金が使われることを期待している。政治的な横断歩道は公道にふさわしくない」と述べ、今回の措置を擁護する姿勢を示しました。フロリダ州知事のロン・デサンティス氏も、この騒動を受けて「国道が政治的目的のために占領されることは許されない」と投稿し、レインボーカラーの横断歩道が「政治的」であると暗に批判しました。

一方、フロリダ州上院議員のカルロス・ギレルモ・スミス氏は現場を訪れ、「FDOTは真夜中に市の横断歩道を不当に破壊し、レインボーカラーを剥がした」「最低の裏切り行為だ」と当局の行動を強く非難しました。事件前からオーランド市長を務めるバディ・ダイヤー氏も、横断歩道のレインボーカラーが取り除かれたことに「ショックを受けている」と声明を発表。「当時、わが国最大の銃乱射事件であった『パルス』のメモリアルの一部を、安全性についてのデータや議論もなく、いきなり撤去するというのは残酷で政治的行為だ」と述べました。さらに、「この横断歩道は、メモリアルを訪れる多くの歩行者の安全性と視認性を高めるだけでなく、49人の犠牲者を追悼するというオーランドの決意を視覚的に思い起こさせる役割も果たしている」とし、「レインボーの横断歩道は消えても、49人を称えるというわれわれコミュニティの決意は、決して揺らぐことはない」と、追悼の精神が失われることはないと強調しました。

フロリダ州オーランドで黒く塗りつぶされたパルス事件追悼の横断歩道フロリダ州オーランドで黒く塗りつぶされたパルス事件追悼の横断歩道

結論

オーランドのレインボー横断歩道が黒塗りにされた一件は、追悼と表現の自由、そして公共空間における「政治的」なシンボルの位置づけに関する深い議論を巻き起こしています。州当局と一部政治家が「交通安全」や「非政治性」を理由に挙げる一方で、事件の犠牲者やLGBTQコミュニティを支持する人々は、この行為を「政治的」であり「冷酷」なものと捉え、記憶と尊厳を踏みにじるものだと強く反発しています。この問題は、今後もフロリダ州および全米の世論に大きな影響を与え続けるとみられます。

参考資料