伊根の舟屋、観光客殺到で「オーバーツーリズム」深刻化:住民が抱える「静かな町」への願いと対策

京都府北部の丹後地方に位置する伊根町は、京都市内から車で約2時間の距離にあり、海に浮かぶ古民家のような「伊根の舟屋」で知られています。この唯一無二の風景は国内外から年間48万人以上もの観光客を惹きつけ、人口2000人に満たない小さな町に大きな経済効果をもたらしています。しかし、その一方で、観光客の増加は「オーバーツーリズム」と呼ばれる深刻な問題を引き起こし、地元住民の生活に多大な影響を与えています。観光客を歓迎する声がある一方で、この小さな観光名所では一体何が起きているのでしょうか。

伊根湾に立ち並ぶ伝統的な舟屋群。この美しい景観が多くの観光客を魅了する一方で、観光課題も浮上しています。伊根湾に立ち並ぶ伝統的な舟屋群。この美しい景観が多くの観光客を魅了する一方で、観光課題も浮上しています。

唯一無二の「舟屋」風景が招く光と影

伊根町の観光名所「伊根の舟屋」は、1階部分が海に面した舟置き場となっている独特な建物が約230軒連なる景観が特徴です。日本海に浮かぶこの「舟屋」群は世代を問わず高い人気を誇り、平日でも多くの観光客で賑わいを見せています。訪れた大学生からは「風情があって京都を感じる」「静かで良い観光地」といった声が聞かれます。

しかし、この人気は町の平穏を脅かす「異変」をもたらしています。地元住民からは「観光客が増えることは感謝すべき面もあるが、少し異常な状況」「週末は家から出たくない。穏やかな伊根に戻してほしい」といった、観光客の増加に対する複雑な思いや切実な願いが聞かれます。京都市などの都市部で問題となっているオーバーツーリズムが、伊根町でも深刻な事態に陥っており、特に週末には観光客でごった返す状況が常態化しているとのことです。

週末の伊根町:狭い道での交通麻痺と危険な状況

とある日曜日の午前中、現地を訪れた際には観光客はまばらで、平日の光景とさほど変わらない印象でした。しかし、平日には見られない交通誘導員の姿があり、彼らは「両方から車が来るため、昼休みがごちゃごちゃになる」「他県ナンバーが多い」と、既に交通量の多さに言及していました。午後1時を過ぎると、町中に多くの車が入り込み、あたりはたちまち大渋滞に陥りました。

伊根町には鉄道がなく、ほとんどの観光客が車で訪れるため、周辺の道路は非常に狭く、対面通行の際はすれすれになる場面も少なくありません。さらに、多くの歩行者が行き交うため、非常に危険な状況が頻繁に発生しています。実際に京都市から訪れた観光客は、「道が狭いと感じた。先ほど脱輪しかけたので怖かった。後ろから『右右右!』と助けてもらった」と、その危険性を語っています。

伊根町の昨年の観光客数はおよそ48万人と過去最多を更新し、今年もそれを上回るペースで推移しています。オーバーツーリズム対策として、伊根町は3カ所の駐車場を設置し、約100台を収容できるようにしていますが、この日はほぼ満車状態であり、駐車スペースの不足もまた深刻な問題となっています。

課題解決への道:地域住民と観光客の共存を目指して

伊根町が直面するオーバーツーリズムの問題は、地域経済の活性化と住民の生活環境の保全という二つの側面の間で、いかにバランスを取るかという難しい課題を突きつけています。美しい「舟屋」の風景を守り、持続可能な観光地として発展していくためには、観光客の分散化、公共交通機関の利用促進、駐車場の拡充、そして観光客へのマナー啓発など、多角的な対策が喫緊の課題となっています。地域住民と観光客双方が快適に過ごせる「静かで良い観光地」としての伊根町の未来が、今問われています。

参考文献:

  • FNNプライムオンライン
  • 伊根町観光協会
  • 国土交通省 観光庁