山里亮太、フィリピンの低栄養児を支援する「赤メガネ食堂」開設の真意

お笑いコンビ「南海キャンディーズ」のツッコミとして知られる山里亮太さんが、NPO法人ACTIONと協力し、フィリピンで低栄養に苦しむ子どもたちへの給食提供プロジェクト「赤メガネ食堂」を設立しました。著名人の社会活動に対しては「売名行為だ」「偽善者」といった批判の声も少なくありませんが、山里さんはそうした声に「ブレーキはかからなかった」と語っています。なぜ彼はフィリピンの子どもたちを支援する道を選んだのか、その深い思いに迫ります。

「赤メガネ食堂」が拓く子どもたちの未来

2025年8月下旬、フィリピン・マニラ首都圏北西部にあるタンザ小学校に「赤メガネ食堂」が正式にオープンしました。マニラ首都圏、特に貧困地域では、経済的な困窮が背景となり多くの子どもたちが栄養失調に陥っています。この食堂では、選ばれた100人の低栄養児童に対し、1年間、月曜日から金曜日まで無料で給食を提供します。山里さんは、この食堂の建設費用を全面的に支援しました。

食堂のオープンには山里さん自身も現地を訪れました。子どもたちが心底から喜び、美味しそうに給食を食べる姿に触れ、「これからも食べられるの?」という質問に「そうだよ」と答えたときの、彼らの満面の笑みが深く心に残ったといいます。中には夜中から早朝まで父親の漁を手伝ってから学校に来る子や、空腹で集中できず学校が辛い場所になってしまっていた子もいました。しかし、給食が提供されることで、学校は友達がいて、温かい食事ができる「最高の場所」へと変わるのです。お腹が満たされれば、勉強にも意欲的に取り組めるようになります。

お笑い芸人・山里亮太さん。NPOと協力し、フィリピンで「赤メガネ食堂」を開設。お笑い芸人・山里亮太さん。NPOと協力し、フィリピンで「赤メガネ食堂」を開設。

「劣等感」から始まった国際支援、そして親としての使命感

山里さんがフィリピンの子どもたちへの支援に目覚めたきっかけは、意外にも彼自身の「劣等感」でした。以前から日本の「子ども食堂」への寄付は行っていたものの、「人間としての厚みが足りない」という思いを抱き続けていたといいます。この悩みを打ち明けた妻である俳優の蒼井優さんが、ママ友に「もっと見識を広げられる機会はないか」と相談。そのママ友が偶然にもJICA(国際協力機構)の関係者であったことから、2023年にフィリピンへの取材旅行が実現しました。

この取材で、山里さんはフィリピンの子どもたちを支援するNPO法人ACTIONの代表、横田宗(はじめ)氏と初めて出会い、現地の様々な状況を案内されました。マニラでは都市開発が進む一方で、スラム街の子どもたちは痩せ細り、ボロボロの服を着て裸足で産業廃棄物の上を歩くという厳しい現実が広がっていました。取材の最終日、山里さんは横田氏に「僕に何かできませんか」と申し出ました。自身に娘が誕生し、親となったことで、どの子も「自分の姪や甥」のように身近な存在に感じられるようになったことも、彼を突き動かす大きな要因となりました。

山里亮太さんの「赤メガネ食堂」は、単なる給食提供にとどまらず、子どもたちの笑顔と未来、そして教育への希望を育む大切な場所となっています。彼の個人的な感情から始まった支援は、国際協力という大きな枠組みの中で、多くの命に光を灯し続けています。