避難情報「分かりにくさ」解消 「指示」一本化…行動、強く促す





球磨川が氾濫した熊本県人吉市では、「逃げ遅れ」による犠牲者が相次いだ=4日午前
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 政府が災害時の避難情報のあり方を見直し、避難勧告を廃止して避難指示に一本化するのは、毎年災害のたびに逃げ遅れによる犠牲者が絶えないことを踏まえたものだ。これまでも大規模な災害が発生するたびに検証チームを立ち上げて災害情報の改良を重ねてきたが、今回は住民に強く避難行動を促す抜本的な解決策に乗り出す。

 転機は平成16年にもあった。当時は過去最多となる10個の台風が上陸し、新潟、福井、兵庫などで大規模な河川の氾濫が発生。自治体が避難勧告を出すタイミングの遅れが問題化し、翌年、避難勧告の前段として「避難準備情報」が新設され、判断基準となるガイドラインも策定された。

 21年に兵庫県佐用町で20人が犠牲になった局地的豪雨では、一律に避難所へ移動せずに建物の2階以上で安全を確保する「垂直避難」の考え方を導入した。

 28年の台風では、岩手県岩泉町の高齢者施設で9人が死亡した。これを機に避難準備情報に「高齢者等避難開始」の文言が追加され、避難指示には「(緊急)」が付け加えられた。

 こうした改善を経てもなお、昨年10月の台風19号や今年7月の豪雨などで数十人が犠牲となる被害が続く。「対応が付け焼き刃だ」(有識者)との批判も上がっていた。

 台風19号の後に行われた内閣府のアンケートでは、両方を正しく認識していた被災住民は17・7%にとどまる。5段階の警戒レベルでいずれも「4」に位置付けられることに全国自治体の68・4%が「分かりにくい」と答えた。

 政府はそこで、昭和36年の災害対策基本法制定以来変わっていない避難勧告と指示の整理に着手した。住民に避難を求めるタイミングを避難指示に一本化し、レベル「5」に情報を新設することで、これまで準備、勧告、指示の3段階での対応を取ってきた自治体にも配慮した。

 ただ、気象庁の警報や水防部局の河川水位情報など防災情報は乱立しており、制度見直しには慎重さも求められる。命に関わる避難情報は二転三転できないため、政府は後に引かぬ覚悟を決めたといえる。(市岡豊大)



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