東京電力福島第一原発の汚染水を海に放流することに対して、韓国はもちろん日本国内でも懸念が尽きないが、日本政府は眉一つ動かさないでいる。科学的根拠からみた時、このような懸念は杞憂にすぎないとして、かえって国内外の世論戦に積極的に乗り出している。
今年5月、日本政府が作成した資料「ALPS処理水について(福島第一原子力発電所の廃炉対策)」には、該当汚染水を放流せざるを得ない状況と、放流妥当性をまとめた日本政府の対応論理がそのまま記されている。
資料の出発点は2022年夏に満杯になる予定の福島第一原発の汚染水の貯蔵タンクだ。福島復興には、福島第一原発の廃炉が不可欠で、敷地内にタンクを増やし続けることはできないとしている。
◆日本「放流物質は汚染水ではなく処理水」
当初、「海洋放出」と「水蒸気放出」の2つの選択肢に提案していた日本は、すでに海洋放出に重点を置いて汚染水処理を検討してきた。「2つの方法の中でも、放出設備の取扱いやモニタリングが比較的容易」という理由からだ。
資料は汚染水を「処理水」と表現するなど放流物質が環境と人体に無害である点を強調するのに大部分を割愛した。放流前に多核種除去設備(ALPS)を使うため、セシウム・コバルト・ストロンチウム・アンチモン・三重水素(トリチウム)など核分裂生成物および活性化物質をほぼ浄化することができるという説明だ。資料にはセシウムの場合、放射能濃度を数億分の1に低減することができるという内容も付け加えられた。
◆日本「放流避けられないトリチウム、韓国原発からも出ている」
問題はトリチウムと呼ばれる三重水素だ。トリチウムは現技術では処理水から分離が不可能なためだ。特にトリチウムは発がん性物質として知られており、福島汚染水放流をめぐる論争で最大の争点に浮上した。
トリチウムをめぐっても「放流されても特に問題ない」という日本側の主張は続く。トリチウムが雨水、海水、水道水はもちろん、体内からも吸収・排泄されるほど幅広く存在しているだけに誇張された恐怖だという論理だ。
あわせて日本政府は、資料に韓国の月城(ウォルソン)原子力発電所について言及し、ここからも年間140兆ベクレル(放射能の測定単位)のトリチウムが排出されていると記述した。
福島第一原発に貯蔵されている全体トリチウム量が860兆ベクレル、日本に降る雨に含まれる年間トリチウム量が220兆ベクレルである点と照らしてみた時、少なくない量のトリチウムが韓国からも排出されているのに、なぜ日本の汚染水だけに過敏に反応するのかということだ。
日本政府は「世界の原子力施設ではトリチウムが放出されているが、これら施設周辺でトリチウムが原因と思われる影響は見つかっていない」とし「仮にタンクの全量(福島第一原発に貯蔵されている860兆ベクレル)を一年で処分した場合でも、日本で生活する人が1年間に自然界から受ける放射線(自然放射線)の1/1000以下と、十分に小さいもの」との結論を下した。