アメリカ映画界の最高の栄誉とされるアカデミー賞。今年は日本映画「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞に輝き、日本でも注目されました。
そして、もうひとつ大きく報じられたのが人気俳優ウィル・スミスさんの平手打ち騒動。あの日ハリウッドで取材していたNNNロサンゼルス支局長が“事件”の波紋をリポートします。
NNNロサンゼルス支局長 岡田光弘
中京テレビの報道デスクから、去年8月にロサンゼルス支局に赴任した私。初めてのアカデミー賞取材で日本映画の快挙にめぐりあい、緊張と興奮が入り混ぜになりました。あの日、ハリウッドから3回目の中継となる昼ニュースを終え少しほっとしていると、支局スタッフのヒトシから授賞式での”事件”を耳打ちされました。
「ウィル・スミスさんがビンタしたと話題に…」、一体どういうこと?日本でも大人気のスターが映画の祭典で暴力とは。事態が飲み込めないまま「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督や主演の西島秀俊さんらの会見場に車を飛ばしました。
第94回アカデミー賞
充実感と疲労困憊(こんぱい)で迎えた翌朝。ロサンゼルス支局に並ぶテレビモニターを見て驚きました。スミスさんの平手打ち報道一色です。スミスさんの行動やスピーチを大々的に取り上げ、批判的に報じています。その時から日本へ送る原稿は、日本映画の快挙から平手打ち騒動の波紋に切り替わりました。
日本でも報じられているように、“事件”の発端は、授賞式でプレゼンターのコメディアン、クリス・ロックさんの一言でした。スミスさんの妻・ジェイダさんに向かい、ジョークとして「G.I.ジェーンの続編が待ちきれない」と言ったのです(G.I.ジェーンは海軍特殊部隊の特訓に挑む女性将校を描いた映画。デミ・ムーアさんが髪を短く剃り上げ出演)。
ジェイダさんは髪が短く「脱毛症」を公表しています。発言を会場で聞いたジェイダさんに笑みはありませんでした。それを見ていたスミスさんは壇上にあがり、ロックさんの頬を平手打ち。「妻の名前を口にするな!」と叫びました。その後、スミスさんは今年の主演男優賞を獲得し、スピーチで「アカデミー、そして候補者に謝罪します」と述べたものの、ロックさんへの謝罪はありませんでした。