取材に応じる竹川さん夫妻の長男=2日、兵庫県内(代表撮影)
観光船の沈没事故で、兵庫県小野市の竹川好信さん(66)と妻の生子(せいこ)さん(62)は、次男の有哉(ゆうや)さん(33)=東京都北区=とともに犠牲となった。家族でただ1人残された30代の長男が2日、取材に応じ、「こんなことになって悔しい。運航会社は重く受け止め、説明責任をしっかり果たしてもらいたい」と語った。
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両親らが事故に巻き込まれたと警察から知らされたのは、事故翌日の4月24日未明。運航会社「知床遊覧船」側とも話したが、改めて連絡するといわれたまま音沙汰がなかった。何も口にできず、一睡もできないまま26日に現場へ向かった。
遺体が安置された体育館で、最初に対面できたのは好信さん。生子さんの身元確認には時間がかかった。「2人に傷はなかったが、ライフジャケットを着ていたから鬱血していた。かわいそうだった」と振り返る。
冷たい海中に長時間いたことで体は硬直していた。どれくらい冷たい思いをしたのかと、自身も海に足をつけてみたが、「痛いほど冷たかった」。
運航会社の家族向け説明会に出席し、ほかの家族の話も聞いた。「なぜこんないい家族がこんな目に」と思うと涙が出た。一方、桂田精一社長の説明はあやふやなものばかり。家族側をきちんと見ようとしない態度で、笑っているようにも見えた。思わず「笑うな」と叫んだという。
今後、桂田社長らに対する刑事責任の追及が本格化する。長男は「安全意識に欠けていて、やるべきことをやっていない。船関係の仕事、人の命に絶対かかわるべきではなかった」と語気を強め、真相解明に期待を寄せた。