小国だからとなめてかかった代償か。
歴訪は失敗? 厳しい評価 中国の南太平洋進出、警戒続く
6/6(月) 13:33配信 時事通信
【シドニーAFP時事】中国の王毅国務委員兼外相が、5月26日から10日間に及んだ南太平洋諸国歴訪を終えた。
5月30日にフィジーで行われた第2回中国・太平洋島国外相会合では、安全保障面で中国の希望通りの合意には至らなかった。太平洋地域の専門家からは、歴訪が失敗だったと厳しい評価も出ているが、米欧などの警戒は解けていない。
◇ずれた安保
要因として中国の根回し不足が指摘される。今回の歴訪で一気に話をまとめようとしたが、サモアのフィアメ首相は「みんなで会って話もしないうちから合意ができていることなど、あり得ない」と述べ、会合前に合意案が報じられたことに不快感を示した。
フィジーのバイニマラマ首相も、王氏に対し「海面上昇でいつ沈むかという人々に、地政学なんて意味はない」と断言。安全保障の概念がずれていると不満を隠さなかった。
オーストラリアのグリフィス大のウェズリー・モーガン研究員は「中国は手を広げ過ぎた」と拙速なやり方を批判した。在フィジー中国大使館は、中国・太平洋島国外相会合について「常に成果文書があるわけではない。次に期待してほしい」と述べている。
◇基地確保へ
英国際戦略研究所(IISS)のユアン・グレアム研究員は、中国の攻勢について「今回は覆面を取ってみせただけ。これからどんどん来る」と警告した。専門家はその背後に、米国の影響力を弱め、軍事バランスを変え、豪州を封じ込めて台湾侵攻の環境を整えるという、さらに野心的な計画があるとみる。米当局者らは、南太平洋での軍事基地確保が中国の目標だと警戒する。
王氏は今回、手ぶらで帰ったわけではなく、2国間協定は幾つも結ばれた。ソロモン諸島とは安全保障協定も締結しており、昨年11月のような暴動が起きれば、中国の警察部隊派遣もあり得る。中国の警官や艦艇が南太平洋の島々で目撃される機会は増えていきそうだ。
一方、豪タスマニア大のリチャード・ハー博士は「たたき売りをするために独立を勝ち取ったわけではない」と強調。欧米も中国も太平洋の島国との駆け引きを侮らないようくぎを刺した。ニュージーランドのマッセー大のアナ・パウルス博士も「太平洋の島国に抜け目のない外交は無理だと考える人は多いが、今見せられているのがまさにそれだ」と指摘している。
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インド太平洋構想に焦って冷静さを欠く外交に
黒井中国は今回の歴訪で南太平洋諸国を束ねる安全保障の枠組みを制定しようとしたが、ミクロネシアの抵抗に阻まれて実現できなかった。それもそのはず、中国がその地域で存在感を増すことになれば自国の危機に繋がってしまう。一帯一路計画は陸上だけで実施されるとは限らないだろう。
黒井ろくに根回しもせず話を進めようとしたのは、日米がインド太平洋の枠組みをクアッドを通じて進めようとしたこと、それから米国が台湾との結び付きをさらに強化しようとしたことなどに対する焦りがあるだろう。だがサモアの首相にも根回し不足だと指摘され、フィジーにも自虐的な言い方ながら拒否されてしまった。