ウクライナにMiG-29を提供したスロバキア、米国とEUから計8.73億ドルの補填を獲得

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MiG-29をウクライナに提供するスロバキアは米国とEUから補填を受ける予定で、米国はスロバキアが取得するAH-1Z導入費用の6割以上を負担、EUは2億ユーロをスロバキアに支払うことになっており、計8.73億ドル相当の補填を受け取る格好だ。

支援に対する補填を要求するのはスロバキアだけではなく、ウクライナは現物を必要としてるため「補填目的の輸出」と解釈するのは間違い

スロバキアは旧ソ連製のMiG-29を更新するため2018年にF-16Vを14機(単座12機+複座2機/約16億ユーロ)発注、2022年に引き渡しが始まる予定だっためウクライナ提供が有力視されていたが、COVID‑19の影響を受けてコンポーネントの製造やグリーンビル工場の組み立て作業に遅延が発生、米国政府は2022年3月に「同機の引き渡しが2024年になる」と通知してきたためウクライナへのMiG-29提供は難しくなった。

ウクライナにMiG-29を提供したスロバキア、米国とEUから計8.73億ドルの補填を獲得

出典:Mariusz Błaszczak

しかしポーランドとチェコは「領空保護の任務を肩代わりする」と提案、4ヶ月間に及ぶ交渉を経て8月末「領空保護提供に関する協定」に署名、スロバキアのナド国防相は「退役するMiG-29をウクライナに提供する準備は整ったが、ウクライナにMiG-29を移転するための合意は成立していない」と述べ、当時の管理人は「両政府間の売却交渉が合意に達していないだけ」と解釈し「直ぐに実現するだろう」と予想していたが、支援の仕組みや流れを理解していなかったので大きく予想を外すことになる。

スロバキアがウクライナにMiG-29を移転するためには「西側諸国の合意」「NATO基準を満たすため追加した装備の取り外し(恐らく通信関係)」「MiG-29を手放すことに対する補填」が必要で、この全ての条件が満たされたため、ポーランドと同タイミングで「13機のMiG-29をウクライナに提供する」と3月17日に発表したのだ。

ウクライナにMiG-29を提供したスロバキア、米国とEUから計8.73億ドルの補填を獲得

出典:Rob Schleiffert/CC BY-SA 2.0

スロバキアはMiG-29を手放すことに「3億ユーロの支払い」を要求していたが、ナド国防相は米国やEUから受け取る補填内容について22日「スロバキアはAH-1Z×12機、ヘルファイア×500発、関連機器、各種サポートを含む10億ドル相当の取引を3.4億ドル(残りの6.6億ドルは米国側が負担)で獲得、さらにEUから2億ユーロ(2.13億ドル)の補填を取る予定だ」と明かしており、EUは欧州平和ファシリティ(EPF)経由でスロバキアに2億ユーロを払い戻すのだろう。

つまりスロバキアはMiG-29をウクライナに提供して「計8.73億ドル相当」の補填を受け取るという意味だが、ポーランドのモラヴィエツキ首相はウクライナに提供したレオパルド2A4について「補償をEUに申請する」と言及していたので、ウクライナに提供するMiG-29にも「同様の補填」を申請している可能性が高い。

ウクライナにMiG-29を提供したスロバキア、米国とEUから計8.73億ドルの補填を獲得

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej レオパルト2A4の扱い方を学ぶウクライナ人兵士

因みに2月2日時点でウクライナに対するEPF経由の拠出金額は36億ユーロ=5,000億円以上に達しており、この中にはウクライナ軍の訓練費用や非殺傷装備の提供費用も含まれているため、EU加盟国のウクライナ支援は「EPFによる払い戻しに依存している(承認されている拠出上限は52億ユーロらしい/1月時点)」というわけでは無く、EPFの資金は国民総所得に応じて加盟国の負担額が決まるためドイツが最も多くEPFに資金を提供している格好だ。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Staff Sgt. William L.Holdaway

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