G7に対し存在感を高める新興国
新興国が経済力の伸長を背景に、国際社会で存在感を高めている。先進7カ国(G7)と比較する形で提唱された新興7カ国を指す「E7」(中国、インド、ロシア、ブラジル、インドネシア、メキシコ、トルコ)は、世界経済に占める国内総生産(GDP)のシェアが2030年にはG7を逆転するとの推計もある。(桑村朋)
E7は大手コンサル「PwC」が提唱。PwCの過去の推計によると、E7のGDPは30年までにG7を逆転した後、50年には1・5倍に達する。
特に勢いがあるのはインドだ。国連は4月、同月末までにインドの人口が中国を抜き世界最多になるとの推計を発表。労働力人口は当面増え続ける。
一方、中国は人口減と高齢化が同時に進む。21年に全人口の14%超を65歳以上が占める高齢社会に入り、生産年齢人口は今後減少に転じる。ただ、それでも先進諸国より「伸びしろ」があるとの分析が多い。
G7は日米欧の経済力を背景に国際政治で影響力を持ってきた。E7やグローバルサウスが経済力を高めれば、相対的にG7の存在感が低下しかねない。
G7は19日からの広島サミットで、法の支配や国際秩序の維持、強化といった価値観への支持を訴え、中露を牽制(けんせい)する構えだ。対露制裁を強化し、全面的な禁輸を検討しているとの情報もあるが、新興・途上国が同調しなければ効果は限定的になりかねない。G7の存在感が問われる広島サミットとなりそうだ。
■G7は新興国と協調の幅広げよ
新興国の存在感が強まる中、G7はどのように対応すべきか。佐橋亮・東京大東洋文化研究所准教授に聞いた。
今の世界は流動的でパワーバランスが変化していると同時に、G7の存在感は相対的に低下している。G7の世界経済に占めるGDPの割合が低下したことで、中露とグローバルサウスの一部を合わせてE7と呼ばれるようになったが、関係性は曖昧で、共通の概念があるわけではない。
グローバルサウスの各国に対しては、インドが首脳会談を開いたり、中国が途上国にとって耳当たりの良い言葉で発展や安全保障などに関与したりする動きはある。しかし、グローバルサウスの各国も決して一枚岩ではない。
世界の中で有意義なまとまりを作っているのは、いまだG7だけだ。G7は7カ国と欧州連合(EU)のほか、価値観を同じくする豪州や韓国も招待国に加わっている。まずG7が連帯を示し、さらに賛同国を広げていくことで、十分に存在感を示せる。
ただ、G7と新興国の視点には大きな距離があり、すべての面で共同歩調を求めることはできない。完全に組み込むという発想ではなく、技術利用や環境問題など新興国の関心が高い分野のルールや制度構築で、協調の幅を広げていくべきだ。(聞き手 石川有紀)