米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

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ウクライナに対するF-16の提供について様々なニュースや話題が飛び交っているが、多くのメディアはF-16がもたらす効果を楽観的に報じ、軍関係者、専門家、防衛産業の関係者は効果に懐疑的な立場を崩していない。

F-16をMiG-29のように操縦するならホットロッドのMiG-29を手に入れたというだけでお終い

ウクライナに対するF-16の提供について様々なニュースや話題が飛び交っているが、多くのメディアは「西側諸国の在庫にはF-16が沢山あるし、米YahooNEWSは4ヶ月でパイトットの訓練は十分だと報じている。F-16があればウクライナを勝利に導ける」と楽観的に報じているが、軍関係者、専門家、防衛産業の関係者は「なぜウクライナの空域保護に最も高価で、最も時間がかかり、最も効果が低そうな戦闘機が提供が必要なのか」と懐疑的な立場を崩していない。

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

出典:Photo By Jim Garamone, DOD

米国のミリー議長は25日、ラムシュタイン会議後の記者会見で「ウクライナ空域を保護する最も安価な方法は地上配備型の防空システムだ。これこそがロシアの航空支配を阻止する最も効果的な方法だったので、我々は防空システムの供給を優先してきた。10機のF-16をウクライナに提供するには10億ドルもの費用がかかり、この10機を維持するには更に10億ドルの費用がかかる。つまり10機の戦闘機提供にかかるコストは20億ドルだ。圧倒的な航空戦力を保有するロシアに対してF-16で対抗するなら相当数の機体が必要で、これを構築するには非常に長い時間がかかる」と述べた。

ケンドール空軍長官も22日「ウクライナでは双方が効果的な地対空ミサイルを使用しているため航空戦力は決定的な役割を果たしておらず、戦闘機の使用は特に限定的で、F-16は戦場のパワーバランスを劇的に変化させるものではない」と、F-16を操縦していたブリードラブ元大将も「F-16はMiG-29より遥かに優れた戦闘機だが、ウクライナ人が欧米流の航空戦術を徹底的に身に着けなければF-16の利点を何一つ発揮できないだろう。F-16をMiG-29のように操縦するならホットロッドのMiG-29を手に入れたというだけでお終いだ」と指摘。

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Valerie Halbert

ミリー議長も、ケンドール空軍長官も、ブリードラブ元大将も「長期的な取り組みの一環」としてF-16を提供することに賛成で、特にブリードラブ元大将は「ウクライナ人の熱意と努力は我々の想像を上回り、常に我々は訓練にかかる時間を過大評価している」と述べ、国防総省が見積もった「18ヶ月間」より短い時間でウクライナ人は必要なスキルを身につけられると予想しているが、F-16が戦場にもたらす効果についてだけは懐疑的だ。

AN/APG-83を搭載するBlock70、最新の電子妨害ポッドや照準ポッド、本格的な敵防空網制圧に不可欠なASQ-213が提供される訳がなく、非ステルス機の生存性や航空作戦の成否を左右する電子戦機の支援を欠いた状態で「ロシア軍の防空シールドが作動する空域」をF-16が飛行するのは自殺行為に近い。

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

出典:Public Domain

あるF-16の元パイロットは「戦場には夥しい量の地対空ミサイルが存在するため1,000フィート以下の低空を飛行する必要がある。この制限は非ステルス機なら旧ソ連機でも西側機でも同じだ。つまりF-16でもウクライナ人が持っている戦闘機とやれることに違いはない」と指摘、つまり前線に対する近接航空支援ではF-16でも旧ソ連機でもやれることに大きな差はなく、巡航ミサイルを運搬するTu-95やTu-160をロシア領空で迎撃できる可能性も0だ。

ウクライナ空域に侵入してきたロシア軍機、巡航ミサイル、Shahed-136を迎撃すること位しか期待できないなら「防空システムに投資する方が効果的だ」という意味で、米統合参謀本部のバトラー大佐は「率直に言うと(政府がウクライナ支援向けに容認している資金内で)F-16を提供すれば、米国は他の物を提供できなくなるだろう」と警告しており、ミリー議長も内心は「空域保護に限られた資金と能力を投資するなら地上配備型の防空システムを優先させた方がいい」と思っているかもしれない。

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

出典:U.S. Army photo by Eugen Warkentin

因みにウクライナ国家安全保障・国防会議のメンバーは「ロシアは1,500機保有する航空戦力の内400機を戦争に投入しており、ウクライナに提供される西側製の戦闘機の数も40機ではなく200機程度まで増やしてほしい」と、最高議会の議員も「世界には4,600機ものF-16があり、私達が要求しているは1%未満の数で本当に大したことがない」と述べており、この調子でF-16提供を要求されれば欧米諸国の支援資金は一瞬で蒸発する。

そもそも戦闘機連合に参加している英国、オランダ、デンマーク、米国、ポルトガル、ベルギー保有のF-16は約1,000機(殆ど米空軍機)程度で、ここから200機も提供できる訳がなく、議員が言及した「4,600機」という数は総生産数だ。

米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Matthew Lotz

資金と能力が無限ならウクライナ軍の接近拒否能力を「F-16」と「防空システム」で多重化すれば良いが、ウクライナはF-16を手に入れることで何を達成して、戦場からどんな利益を得られると考えているのだろうか?

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※アイキャッチ画像の出典:PHOTO BY Senior Airman Duncan Bevan

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