知的障害と自閉症のある息子が恵のグループホームに入居していたときのことを語る間宮絵理さん(仮名)=2023年8月7日、愛知県内
障害者向けグループホーム(GH)大手運営会社「恵(めぐみ)」で、食材費の過大徴収や報酬の不正受給の疑いが明らかになりました。名古屋市で事業を始めた同社は、ここ5年ほどで東北から九州まで各地に進出し、大幅に施設数を増やしてきました。その成長の秘密とは?
恵の驚異的な成長
恵は2018年に名古屋市で最初のグループホームを始めました。「ふわふわ」という名前で、急速に愛知県を中心に施設数を増やし、たった5年で約120カ所を運営するまでに成長しました。
恵はGHだけでなく、通所施設や訪問看護ステーションなども展開しています。主な利用者は知的障害や精神障害がある人々です。
知的障害や精神障害を持つ人々の中には、成人しても親と同居しているケースが多くあります。そのため、親は自身が亡くなった後、子どもたちがどうなるのか、不安を抱えることがあります。恵の経営陣は、「親が亡くなった後、行き場のない人たちの住まいをつくる」と公言していました。
しかし、元幹部社員によると、経営陣の本音は別であり、実際の目的は「お金をもうけて、会社を上場すること」でした。このため、事業拡大が優先され、経験や知識のないスタッフが増えたことで、障害者の支援が行き届かず、不適切なケアや虐待、事故が起きる悪循環に陥ったと言います。
重度障害者への特化と報酬の高さ
障害福祉サービスを提供する事業所は、国や自治体から報酬(給付費)を受け取ります。報酬の金額は、サービス内容などに応じて決められており、障害の重さに応じて報酬も増える仕組みです。
元幹部社員によると、「報酬が高いから」と、支援体制が整っていないにもかかわらず、重度の障害者を受け入れていたそうです。
恵の訪問看護ステーションに勤めていた看護師も同様の証言をし、「障害が重い場合、1日に複数回、訪問看護を行うことができ、報酬も増えるため、どんな障害者でもとにかく受け入れていた」と述べています。
名古屋市にある恵の西日本支社=2023年9月14日
このような事業展開により、恵は驚異的な成長を遂げました。しかし、その反面、適切なケアを提供することが難しくなり、不適切なケアや虐待、事故が相次いで起きていたのです。
現場で起きていた問題について、さらなる調査と対策が必要です。