2年近く宿泊者ゼロ、なぜなのか 「第1号宿泊者」として考えた

宿泊施設

**福島県葛尾村の宿泊施設が2年近くも宿泊者ゼロの状態が続いている理由について考えてみました。地元の村民と一緒に宿泊者第1号として1泊した体験を通じて、この地域が抱える課題に思いを馳せてみました。

2人しか暮らしていない地区

「誘われなければ、わざわざここに泊まることもなかったよ」と、施設に到着した際、大沢義伸さん(70)が笑顔で迎えてくれました。福島県葛尾村野行(のゆき)地区に位置するこの宿泊施設は、阿武隈山系の中腹、標高約500メートルに位置しています。

野行は約1600ヘクタールの広さを持ち、現在はたった2人の夫婦だけが暮らしています。東京電力福島第1原発事故の影響で全村が避難を余儀なくされ、野行は村唯一の帰還困難区域に指定されました。18年4月には復興拠点が設定され、避難指示が解除されたものの、再び人が住めるようになるまで11年以上の時間がかかりました。

村は2021年11月に宿泊交流施設を開設しました。施設は木造平屋建てで、5DKの広さを持ち、風呂やトイレ、エアコンも完備されています。さらに、月額約7000円の電気やガスの基本料金は村が負担し、無料で宿泊することができます。しかし、他の村民は近隣の復興公営住宅など県内で生活しており、宿泊者はゼロのままでした。

ままならないインフラ整備

夕暮れ時になると、周囲は徐々に暗くなっていきます。満月が顔を出し、野行を優しく照らし出していました。「村民以外の希望者にも使ってもらった方が有効活用できますよね」と私が尋ねると、大沢さんはうなずいて「村役場が何か考えてあげてもいいよね」と答えました。

野行では食料品を販売している店舗がなく、買い物には村中心部まで8キロ移動する必要があります。また、診療所は週に1日しか開いておらず、村には薬局もありません。病気の場合は近隣の自治体に行かなければならないのです。生活インフラの整備がままならないことが、多くの村民が帰還できない要因の一つとなっています。

大沢さんは「本来ならここで暮らしたいけど、現実としてはやっぱり住めないから。三春の方が便利だし、病院も近い」とつぶやきました。しかし、彼らは不便な生活も楽しんでおり、その土地にかけがえのない価値を見出しているのです。

「古里がなくなってほしくない」

翌朝、食パンにブルーベリージャムを塗り、牛乳を飲みました。掃除を終えた後、大沢さんが案内してくれると言って連れて行ってくれたのは、かつて自宅の近くを流れる小川でした。彼にとっては、幼少期に妹や友人たちと一緒に遊んだ思い出の場所であり、とても大切な場所なのです。

一男さんは「戻って来てよかった。この景色を眺めながら本当にそう思えるようになってきた」と語りました。不便はあるものの、村の行事やヨガ教室に参加し、遠出して村外で買い物をすることも気分転換になっているそうです。

この宿泊施設をもっと活用することが重要であり、帰還者や移住者が増えるきっかけになると考えました。多くの人々に野行を訪れ、その魅力や現実を知ってもらうことが大切です。そうすれば、大沢さんが口にした「古里がなくなってほしくない」という願いが叶うのではないでしょうか?

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