慶應高校弁論部員が全国大会で異例の「沈黙」 無言の時間を通じ伝えたかったこと

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文・写真 椎名桂子

コロナ禍での制限により、会話が制約される中、慶應義塾高校の弁論部員である西田圭吾さん(神奈川・慶應義塾高校3年)は全国大会において異例のスピーチを行いました。西田さんは弁論中に突如として黙ることで、10秒間の静寂を会場にもたらしました。彼の意図は一体何だったのでしょうか。

コロナ禍で会話を制限され

沈黙

西田さんは中学生の頃にディベートの授業を受け、話すことの面白さに目覚めました。その後、慶應義塾高校に進学し、ディベート部に所属するために頑張ってきました。しかし、彼の高校生活の大半はコロナ禍によって影響を受けました。

“コロナ禍では、マスクやパーテーションが必須とされ、会話が制限されることが「新しい生活様式」とされました。ディベート部や弁論部のような活動では、厳しい目で見られることがありました。ディベート大会もオンラインで開催され、弁論部では聴衆の反応を感じることもできないままでした。活動には味気なさが残りました。”

話すことの大切さを痛感

そのような「会話のない高校生活」を通じて、西田さんは「話すことの必要性」を深く考えるようになりました。「話をすること以外には、お互いを理解する方法はないじゃないか!」と感じた彼は、このスピーチで10秒間の沈黙を取り入れることを決めました。

“この10秒間、会場にいた全員が共有できたのは静寂だけでした。皆が黙っていると何もわからないことを体感してもらいたかったのです。”

本番の会場では多くの聴衆がいたため、沈黙ができるかどうか不安でしたが、結果は練習以上の静寂が広がり、その後のスピーチも一層鮮明になりました。

会話不足の社会になってはいないか

西田さんは「話をすること」を放棄すると、他者を理解することや自分を理解してもらうことができなくなると訴えています。会話不足の社会では事件や事故が増え、最悪の場合は戦争も起こりかねないと述べました。

“話すことの重要性を再認識し、自分の意見を表明し、相手の意見にも耳を傾け、他者を活かしていきたい!”

西田さんは弁論の原稿で、コロナ禍での制約された会話について語っています。彼はこの機会を通じて、私たち全員が「話すこと」の重要性を再認識するよう呼びかけました。

私たちはコロナ禍においても、「話すこと」を大切にする必要があります。マスク越しでもパーテーション越しでも、自分の意見を表明し、相手の意見に耳を傾けることで、他者をより理解し、自分の考えを伝えることができるのです。この当たり前の行為である「喋ること」と、それがもたらす少しの「平和」が、私たちの生活を豊かにしてくれるでしょう。

コロナ禍で上手に話しましょう。