「551蓬莱」社員の死亡、カスハラによる提訴

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大阪地裁、大阪高裁、大阪簡裁が入る合同庁舎=大阪市北区で、曽根田和久撮影

豚まんで有名な「551蓬莱」(大阪市)の社員だった男性(当時26歳)が自殺したのは、客から理不尽なクレームを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)や長時間労働が原因だとして、男性の母親が、労災と認めなかった国の決定の取り消しを求めて提訴した。22日に大阪地裁で第1回口頭弁論があり、国側は請求棄却を求めた。

「551蓬莱」社員のカスハラ被害

訴状によると、男性は入社後、通信販売の電話受付業務を担当していました。チルド商品の注文やクレームの電話に対応する中で、「死ね」「バカ」などの罵声を浴びせられることもありました。2017年10月にうつ病と診断され、休職し、2018年6月に自殺しました。遺族は労災申請しましたが、大阪中央労働基準監督署は2021年3月、「心理的負荷は強くなかった」として労災と認めませんでした。

遺族側は、人格を否定するようなカスハラに加え、多い時で月100時間程度の残業によってうつ病を発症し、自殺に至ったと主張しています。また、当時の職場の電話機は通話内容を録音できず、かかってきた電話の番号を表示する「ナンバーディスプレー機能」もなかったといいます。男性は母親に「(客からの)録音を聞き直せって言われても『録音がない』と説明するとまた怒られるからしんどい」と話していたといい、遺族側は「迷惑行為から従業員を守る設備がなかった」と会社の対応を批判しています。

遺族の訴えと厚労省の対策

遺族は代理人弁護士を通じて、「息子はとても大切な存在でした。国にはきちんと精査して労災だったと認めてほしいです。息子だけではなく、今後同じような環境に置かれた人たちの命を守ることにもつながればいいと思っています」とコメントしました。一方、会社側はコメントを差し控えるとしています。

カスタマーハラスメントについてのUAゼンセンの調査によると、56.7%の人が「過去2年以内にカスハラ被害に遭った」と回答しています。被害の中でも特に印象に残った行為は、暴言が39.3%、同じ内容のクレームを繰り返すことが17.1%、威嚇・脅迫が15.0%でした。対応については、「謝り続けた」が44.4%と最も多かったです。

厚生労働省によると、22年度にはカスハラによる労災と認定された人が6人おり、そのうち2人が自殺していました。厚労省は企業向けの対策マニュアルを作成し、23年9月には精神障害の労災認定基準にカスハラを新たに追加しました。具体的な例としては、①治療が必要なほどの暴行を受けたこと、②人格や人間性を否定するような執拗な言動を受けたことなどが挙げられています。

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