50年目の大洋デパート火災:証言のテープが熊本学園大へ寄贈される

大洋デパート火災の証言を録音したテープ
証言を録音したテープを前に当時を振り返る松本弁護士(10月、熊本市中央区で)

大洋デパート火災から50年が経過し、104人の方々が亡くなられたあの悲劇の日が迫っています。このビル火災は戦後2番目に多くの命が失われた事件であり、その反省から大型ビルの防火対策が大きく見直されるきっかけとなりました。時間が経つにつれて、その記憶も薄れていきますが、熊本市の弁護士が犠牲者を救助した消防士たちの法廷での証言をカセットテープ36本に録音し、そのテープを熊本学園大学に寄贈する計画を立てています。(石原圭介)

「50年前の肉声を記録した貴重な資料。残していく価値がある」と話すのは、遺族らが起こした集団訴訟の原告側弁護団事務局次長で、テープを管理してきた松本津紀雄弁護士(80)です。彼は同市の事務所でテープを広げ、思い出に浸っていました。

大洋デパート火災の悲劇

1973年11月29日、午後1時15分頃、大洋デパート火災は発生しました。その日は買い物客で賑わう真昼間でした。火災は2、3階の階段付近から発生し、瞬く間に煙と炎が上階に広がりました。結果として、104人の方々が亡くなられました。多くの方が一酸化炭素中毒で亡くなられたのです。この事件は、スプリンクラーや誘導灯がなく、防火シャッターも作動しなかったなど、防災上の不備が重なったことが拡大の一因とされています。

また、72年には大阪で発生した千日デパートビル火災で118人の方々が亡くなっており、この2つの事件から得られた教訓を受けて、74年には消防法が改正されました。デパートなど多くの人が出入りする建物には、スプリンクラーや排煙設備の設置が義務付けられました。

テープは貴重な資料

74年5月、火災の遺族82人を含む原告らが熊本地裁にて集団訴訟を提起しました。彼らは大洋デパートの会社に対し、37億円の損害賠償を求めたのです。遺族や消防士なども含めて、12人の方々が原告側の証人として法廷に立ち、火災の状況や悲しみを訴えました。

録音されたテープは、弁護団が糟谷忠男裁判長の許可を得て作成されたものです。松本弁護士によると、このテープには被告側の証人も含まれており、当時の現場の様子が生々しく伝わる言葉が残されています。防火シャッターの不具合や階段に残された荷物など、防火対策の不備に対しても指摘する声があります。

テープには、熊本市消防局中央消防署の救助工作隊分隊長であった井上誠さん(86)も証言しています。テープには「煙がひどく、ものすごい高熱だった」といった当時の現場の様子が生々しく伝えられています。

この貴重な証言を後世に伝えるために、松本弁護士は熊本学園大学にテープを寄贈することを計画しています。このテープは、大洋デパート火災の悲劇を忘れずに、防災対策の重要性を再認識するきっかけとなるでしょう。

ソースリンク: 日本ニュース24時間