「どれだけ金がほしいのか…」資産家「一家」の没落招いた京都タリウム連続投与事件

宮本一希被告の自宅に捜索に入る大阪府警の捜査員

ハンマーが壁を打つ。ドア枠ごと崩れ落ち、周囲に砂ぼこりが舞った。今春まで3棟の豪邸が威容を誇っていた約250坪の敷地では、建物の解体が進められていた。

京都市左京区の閑静な住宅街に住んでいた資産家一家「宮本家」が没落した。その原因は一人の男によるものだった。

宮本一希被告(38)は不動産賃貸業を軸に、舞妓のイベントなどを手掛け、メディアにも取り上げられていた。しかし、彼は劇薬のタリウムを知人の女子大生に摂取させ殺害した容疑で逮捕された。その後、自身の叔母にもタリウムを摂取させたとして殺人未遂容疑で再逮捕された。叔母は3年以上も意識不明の状態が続いている。

解体中の家屋では、かつて叔母と被告が同居していた。「誰も寄り付かない。更地にするしかないでしょうね」と叔母の元夫はつぶやいた。

消去法の捜査

事件発覚は昨年10月。大学3年の女子大生が急変し、病院に搬送後まもなく死亡した。検出されたのは、致死量のタリウムだった。タリウムはかつて殺鼠剤に用いられた劇薬である。一気に事件性が浮上した。

女子大生の自宅マンションで、直前まで一緒にいたのが宮本被告だった。しかし、周囲からタリウムは見つからず、直接的な証拠もなかった。そこで大阪府警は〝消去法〟の捜査を行った。

府警は女子大生の遺体を司法解剖し、タリウムが投与された時間の幅を特定した。そして、2人が一緒に飲食店で食事をしてから、マンションに入っていくまで防犯カメラの映像をつぶさに追跡し、投与された時間範囲の中で、被告以外の第三者が関与し得る可能性を排除していった。

被告は逮捕から一貫して黙秘を貫いている。被告の犯行と女子大生の関係、そして動機となりうる事情はまだ明らかになっていない。

コロナ助成金も詐取

宮本被告の周囲を取材すると、逮捕直前まで派手な生活をしていたことが分かった。

被告は叔母が倒れた2年7月以降、「不動産が数億円で売れた」と言いふらし、急に豪華な生活になった。予約の取れない高級店に足しげく通い、祇園などで店舗貸し切りの食事会を開催することもあった。知人の30代男性は「食に対するこだわりは異常だった」と話している。

散財の原資は、叔母が管理していた財産だと考えられる。宮本家はもともと京都市内の不動産売買で財を成し、叔母がそれを引き継いだ。被告もその同族会社の取締役に就任したが、会社内で使途不明金が次々と発覚し、叔母によって2年2月に役職を解任され、金銭的な援助も打ち切られた。

さらに、被告はコロナウイルス対策の助成金を不正に受給していた疑いがある。これについても叔母に疑われ、叱責された。結局、被告はコロナ助成金約1億1千万円の詐取容疑で告発された。

「どれだけ金が欲しかったのか」と叔母の元夫は唖然とした表情で語る。「(叔母は)一族の事業を一人で支え、重圧もあった。その中でかわいいおいの一希に、事業を任せたいと期待した部分があったはずだ。なのに何度も、何度も裏切られた」と彼は言った。

Source link: 日本ニュース24時間