システム移行費用「国が全額負担を」 行政事務統一に地方反発

地方自治体は、政府の計画である2025年度までに全国で行政の基幹システムを統一することに反発しています。既存のシステムからの移行は法的に義務付けられていますが、数十億円の移行費用がかかる自治体もあり、政府の予想とは異なる結果になっています。政府は移行補助金の既存基金を5千億円以上追加しましたが、自治体の要求する全額補助は不透明な状況です。このため、双方の対立が深まっています。

行政事務統一とは?

行政事務の統一は、岸田文雄首相が重要視しているデジタル行政改革の柱です。地方自治体がそれぞれ運用しているシステムを共通化し、業務効率化や維持管理コストの低減を図ることを目指しています。政府は、補助金の財源確保のためにデジタル基盤改革支援基金を創設し、1825億円を計上しました。

移行費用の負担

しかし、移行に伴う初期投資が地方自治体にとってネックとなっています。共通化の対象は住民基本台帳や健康保険、児童手当など20種類の業務であり、作業量と移行費用は膨大です。

中核市市長会が調査したところ、全62市の平均移行費用は18億1千万円であり、国の補助上限額は平均3億4千万円にとどまりました。要望書では「移行費用全体を賄えず、非常に重い財政負担を強いられる」と不満が述べられています。指定都市市長会も、経費が補助上限の3倍から16倍になると試算しています。全国市長会は、補助上限が経費の1割にも満たない自治体も存在すると訴えています。

地方の要求に応えるため、総務省は23年度の補正予算で基金を5163億円増額し、計6988億円を確保しました。総務省デジタル基盤推進室は、「自治体の移行費用を試算し、必要な財源を確保した。今回の追加予算で問題ないはずだ」と説明しています。

しかし、不安は依然として払拭されていません。特に政令市の場合、システムの仕様が未確定であるため、移行費用の規模が予測できません。福岡市の担当者は「国が全額負担すべきだ」と主張しています。

また、法律では基金の設置が25年度末までとされており、それまでに移行できない場合、補助金が支給されない可能性もあります。技術者不足などの課題がある中、期限内の移行を求める国に対する不信感はますます高まっています。

立命館大学の平岡和久教授(地方財政論)は、「25年度までに移行が困難な自治体は多く、制度を早急に見直す必要がある。国の方針を進める以上、自治体の不安を解消するために国が全額負担すべきだ」と指摘しています。

※本記事の内容は、西日本新聞の報道内容を元に作成しています。

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