奇跡のスケッチ!福岡の無罪医師が76年越しでアメリカから返還された

福岡市の遺族に返還された無罪の医師が巣鴨プリズンで描いたスケッチがアメリカから76年の歳月を経て戻ってきました。これは、九州帝国大学の医学部で戦時中に行われた「九大生体解剖事件」の一環として実験手術を受けた米軍搭乗員に関するものです。

Article Image

スケッチを受け取る真武七郎さんの三男清志さん(中央)。右は長女ナナさん=11月24日午前、福岡市

真武七郎さんのスケッチに込められた思いとは?

スケッチには「正義はどこに?」という英語の言葉が書き込まれており、絵の中の男性は絶望し、理不尽な現実にうなだれている様子が伝わってきます。このスケッチは、元看守の米兵がアメリカで保管していたもので、なんと76年の歳月を経て福岡市の遺族の元に戻ってきたのです。

Sketch

真武七郎さんが巣鴨プリズンに収監中に描いたスケッチ。英語で「正義はどこに?」と書き込みがある=遺族提供

スケッチから窺える真武七郎さんの心情とは?

真武七郎さんは福岡県宗像市で生まれた医師であり、九大生体解剖事件の際には九州医学専門学校卒業後、福岡市の偕行社病院で院長を務め、その後は大分県の陸軍病院に転勤しました。

九大生体解剖事件では、米軍捕虜8人から肺や肝臓を摘出し、海水を輸血血液の代わりに用いるなどの実験が行われましたが、全員が死亡しました。真武七郎さんを含む関係者30人が横浜裁判にかけられ、作家の遠藤周作さんの小説『海と毒薬』の題材ともなりました。

真武七郎さんはGHQからの過酷な取り調べを受け、虚偽の自白を強要されて巣鴨プリズンに収監されました。彼が自白に至った背景には、故郷に残した妊娠中の妻や幼い息子のことが気がかりだったとされています。

Sketch

真武七郎さんが巣鴨プリズンに収監中に描いたスケッチ。机に顔を伏せている=遺族提供

8枚のスケッチにはどんな思いが込められている?

真武七郎さんが描いたスケッチは全8枚あり、黄ばみが目立ちます。その中には、窓の近くでうつむきがちに座る男性の絵や、「BY WHOM…THIS RESULT(この結果は誰によるものか)」と書かれた絵などがあります。

その他にも、巣鴨プリズンでの労働や食事、散歩の場面や、故郷の妻が生まれたばかりの息子を抱く夢を見て恋しがっている絵などもあります。また、膝立ちの男性が机に顔を伏せた絵には、「FOR WHAT…THIS MISFORTUNE(この不運は何のために)」と書かれています。

Sketches

返還されたスケッチ。妻子だろうか、「故郷の夢」とある=遺族提供

終戦から76年、福岡の遺族のもとに帰還

76年の歳月を経て、真武七郎さんが描いたスケッチ8枚がアメリカから遺族の元に返還されました。これらのスケッチは、戦争の狂気から生まれた悲劇を伝える貴重な証拠とも言えます。

Sketch

軍医だった当時の真武七郎さん=遺族提供

真武七郎さんのスケッチは、彼が経験した過酷な状況と心情を反映しています。これらのスケッチを通じて、戦争の犠牲者としての彼の苦悩や無念さを垣間見ることができます。

記事のソースはこちらです。