「ブラック霞が関」からの脱出術 – 退職官僚が告白する真実

霞が関の官庁街は、「無理ゲー」の特効薬のようなものとなっている。過酷な過重労働により、官僚たちは休職や退職を余儀なくされているのだ。今回、厚生労働省を退職したある女性の証言を紹介しよう。

「このままではやばい」と感じた日々

佐藤美咲さん(仮名、20代)は、厚労省で働いていた頃、新型コロナウイルス感染症の流行により仕事が急増した。毎晩午前2~3時に帰宅し、家に着いても電話で仕事の指示が入ってくる日々が続いたのだ。月に140時間以上もの残業が発生し、彼女は不眠症になってしまった。彼女はスマートフォンに、不満を記した。

「3時に(国会答弁の作成に関する)連絡が来ていた。なんか、もうやってらんないよ」

「完全に無理ゲー」

「無理ゲー」とは非常に難解でクリアするのが困難なゲームを指すスラングであり、ゲーム以外のシチュエーションでもよく使われる言葉となっている。当時の厚労省では仕事量が増え続けていたが、職員の増加はなかなか進まなかったのだ。

職場では一つ一つの仕事について議論する時間がなかった。厚労省の政策や指針についての文章は、関係者の意見を繋ぎ合わせるだけの「パッチワーク」のようなものだった。佐藤さんは仕事に対して意義を見出せなくなってしまった。

日中でも彼女の気持ちは沈んでおり、つい涙が止まらなくなってしまうことがあった。「このままではやばい」と感じた彼女は、退職を決意することになったのだ。

「あしたのジョー」のような燃え尽きた官僚たち

国家公務員は労働基準法の適用外であり、残業時間に関しては人事院規則によって定められている。1か月については100時間、1年間については720時間が上限となっているが、重要な法案作成など特別な業務があれば、残業時間は無制限となる。

厚労省の内部資料によると、社会保障政策の担当部局では、職員の平均退庁時間が午後10時半にまで達する月もあったという。新型コロナ禍で多忙を極めた内閣官房の対策推進室では、残業時間が月378時間にもなる職員も存在した。

国家公務員の長期病休者数は精神・行動障害により21年度に4760人となり、20年前と比べて倍増している。霞が関周辺の精神科クリニックで診療を行う井原裕・独協医大教授は警鐘を鳴らしている。

「ぼうっとして、真っ白に燃え尽きた『あしたのジョー』のような官僚を何人も診たことがあります。情緒不安定で涙が止まらない、パニック発作などの症状を抱えた人もいます。官僚の働き方を改革するべきです」

改善策は少しずつ始まっている。政党間の合意により、官僚が深夜残業をしなくても済むよう、質問事項を速やかに省庁へ通告することが行われている。省庁内では、オンラインアプリによる文書作成の効率化や、有識者会議の外部委託なども進んでいる。それでも、「数年前と比べて残業は減ったが、法案の準備や国会対応が重なると帰宅は明け方になる」という声もあるのだ。

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