石破新首相の掲げる「アジア版NATO」構想と日米地位協定改定:実現可能性と課題を元米国務省高官に聞く

新首相誕生と日米関係への期待

2024年秋の総裁選を制し、石破茂氏が新首相に就任しました。経済政策では岸田路線の継承が予想される一方で、安全保障分野では「アジア版NATO」創設や日米地位協定改定など、岸田前首相よりも踏み込んだ独自路線を打ち出しており、国内外から注目を集めています。

米国務省の元日本部長であるケビン・メア氏は、石破氏について「理性的な思考と確固たる政策実行力を持つ、安全保障問題の専門家」と高く評価しています。長年石破氏と親交のあるメア氏に、新政権の安全保障政策について、ジャーナリストの山田敏弘氏がインタビューを行いました。

「アジア版NATO」構想:実現への道筋

石破首相は、アジア太平洋地域における安全保障協力体制の強化を目指し、「アジア版NATO」創設を提唱しています。メア氏は、日米同盟を基軸としつつ、日本が韓国、オーストラリア、フィリピンなどとの防衛協力を深めていくことの重要性を強調し、石破氏の地域的な連携強化への意識を評価しています。

元米国務省日本部長のケビン・メア氏元米国務省日本部長のケビン・メア氏

ただし、「アジア版NATO」の実現には、加盟国に対する攻撃を共通の脅威とみなすNATO条約第5条に相当する条項を、憲法9条との兼ね合いでどのように規定していくかが課題となります。メア氏は、憲法改正よりも喫緊の課題として、日本の防衛力強化を挙げ、具体的な議論は選挙後の課題としました。

日米地位協定改定:真の狙いとは

石破首相は、在日米軍の駐留に関する日米地位協定の改定にも意欲を示しています。メア氏は、石破氏の真意は地位協定の抜本的な見直しではなく、日米の基地共同使用の拡大による自衛隊の運用能力向上にあると分析しています。

日米の専門家の間では、石破首相の発言の真意を巡り様々な解釈が飛び交っていますが、米国政府内では、日本の防衛力強化と日米同盟の深化につながるものとして、石破氏の意図に理解を示す向きが強いようです。

新政権の安全保障政策:今後の展望

石破新政権の安全保障政策は、日米同盟を基軸としつつ、アジア太平洋地域における日本の役割を積極的に拡大していく方向であると予想されます。「アジア版NATO」構想や日米地位協定改定については、今後具体的な議論が進められる中で、日本が地域や国際社会とどのように連携していくのか、その行方が注目されます。