2023年10月26日、南カフカス地方の旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)で議会選挙(定数150)が実施されました。国際社会から注目を集めた今回の選挙は、ジョージアが親ロシア路線と親欧米路線のどちらを選択するのかを占う重要な意味を持っていました。
中央選管の発表によると、開票率約80%の時点で、親露色を強める与党「ジョージアの夢」が約54%の票を獲得し、過半数を確保して勝利する見通しとなりました。一方、親欧米路線への回帰を訴えてきた野党側は選挙における不正を主張しており、抗議活動の実施を表明しています。
親露政党の勝利とEU加盟への影響
2008年にロシアの軍事侵攻を受けたジョージアは、反露を国家的な重要課題と位置づけてきました。2012年に政権を獲得した「ジョージアの夢」も当初は親欧米政策を推進し、2022年12月にはジョージアのEU加盟候補国としての地位獲得を達成しました。
投票所で投票用紙を数える選挙管理委員会のメンバーたち
しかし近年、「ジョージアの夢」はウクライナ侵攻に伴う対露制裁への不参加など、親露的な傾向を強めています。党首であるイワニシュビリ元首相はロシアで財を成した大富豪であり、ジョージア国内の親露分離派地域である南オセチアとアブハジアをめぐる領土問題解決を視野に、ロシアとの関係改善を模索しているとの見方も出ています。
選挙結果に対する懸念と今後の展望
「ジョージアの夢」は選挙前に、外国からの資金提供を受ける団体を規制する「反スパイ法」や、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する「LGBT規制法」を制定しました。これらの法律は、ロシアで政治的な弾圧の手段として利用されている法律と類似しており、EUは「ジョージアの夢」による強権化を批判し、加盟手続きの一時停止を発表しました。
親露色を強める与党「ジョージアの夢」創設者のイワニシュビリ氏
今回の選挙結果を受けて、EUとジョージアの関係悪化は避けられず、ジョージアのEU加盟はさらに不透明になる見通しです。アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は選挙前に、「ロシアか欧米か」と題するレポートを公表し、今回の選挙を「ジョージア独立以来、最も重要な選挙」と位置づけていました。
今後、「ジョージアの夢」がロシアに接近し、欧米が主導してきたロシア孤立化の流れに変化が生じる可能性も指摘されています。ジョージアのEU加盟、そして国際社会への影響という観点からも、今後の動向が注目されます。