CATL(寧徳時代新能源科技)、世界最大のバッテリーメーカーが、韓国市場への本格参入を表明しました。今年末もしくは来年初めに韓国法人を設立する計画で、現代自動車グループなどへの営業強化や廃バッテリーリサイクル技術での韓国企業との提携も視野に入れています。この動きは、米欧の貿易障壁強化を受け、新たな市場開拓を目指すCATLの戦略を反映しており、韓国バッテリー業界に大きな影響を与える可能性があります。
CATLの韓国進出、その背景と狙い
CATL社屋の様子
米国や欧州による対中貿易障壁の高まりを受け、CATLは新たな市場として韓国に注目しています。2021年に設置した小規模な支社を法人へと格上げし、本格的な事業展開に乗り出す予定です。現在、CATLの海外法人は米国、ドイツ、日本、フランス、ハンガリーに限定されており、韓国への法人設立は、同社にとって重要な戦略的ステップとなります。韓国市場への進出は、CATLがグローバル企業としてのプレゼンスを高める狙いがあると見られています。「中国政府の支援を受けている」というイメージ払拭のため、海外展開を積極的に進めることで、グローバルNo.1企業としての地位を確固たるものにしようとしているのです。
現代自動車グループとの協業拡大、LFPバッテリーを武器に
CATLは、価格競争力と安全性の高いLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを武器に、現代自動車グループへの営業を強化する方針です。すでに現代自動車グループは、コナ、ニロにNCM(ニッケルコバルトマンガン)バッテリー、レイにLFPバッテリーを採用しています。韓国バッテリー市場におけるシェア拡大を目指し、更なる採用拡大を狙っています。 バッテリー専門家の田中一郎氏(仮名)は、「CATLのLFPバッテリーは、価格、安全性、航続距離のバランスに優れており、韓国市場でも大きな需要が見込める」と分析しています。
廃バッテリーリサイクル技術で韓国企業との提携模索
CATLのバッテリー生産ライン
CATLは、廃バッテリーリサイクル技術においても韓国企業との協力を視野に入れています。韓国は鉱物処理技術に強みを持つことから、CATLは韓国企業との提携を通じて、2035年までに廃バッテリーリサイクルで核心素材を調達するという目標達成を目指しています。核心鉱物の確保からバッテリー生産、リサイクルまで、バッテリー循環エコシステム全体を掌握することで、競争優位を築く戦略です。韓国のバッテリーリサイクル技術に精通する専門家、朴智星氏(仮名)は、「CATLと韓国企業の提携は、両国にとってwin-winの関係となる可能性が高い」と述べています。
韓国バッテリー業界への影響
CATLの韓国進出は、韓国バッテリーメーカーにとって大きな脅威となる可能性があります。営業拠点としての機能にとどまらず、研究開発人材の確保など、韓国法人をグローバル市場への足掛かりとして活用する可能性も考えられます。韓国対外経済政策研究院のチェ・ジェヒ専門研究員は、「CATLは韓国消費者からのブランドイメージも高く、韓国EV市場に本格参入すれば、市場に大きな影響を与えるだろう」と指摘しています。また、NCMバッテリーリサイクル技術で先行する韓国メーカーと協力し、世界市場でのシェア拡大を狙う可能性も示唆されています。
まとめ
CATLの韓国法人設立は、韓国バッテリー市場の競争激化を招くことは必至です。韓国メーカーは、CATLの動向を注視しつつ、技術革新やコスト削減など、競争力強化に一層取り組む必要に迫られています。