インターネット黎明期、世界中のパソコンユーザーに親しまれたアメリカ・オンライン(AOL)のメール着信音「You’ve Got Mail」。その温かみのある声の持ち主、エルウッド・エドワーズ氏が74歳で亡くなりました。この記事では、エドワーズ氏の人生と、AOLとの知られざるエピソードに迫ります。
AOLとの出会い:妻のひと言から生まれた伝説の音声
オハイオ州クリーブランドの地元テレビ局WKYCでグラフィックやカメラ操作を担当していたエドワーズ氏。AOLとの出会いは、まさに偶然でした。1989年、妻のカレンさんが、当時勤務していたクオンタム・コンピューター・サービシズ(AOLの前身)で、スティーブ・ケースCEOがAOLソフトウェアに音声を入れる計画について話しているのを耳にしたのです。
カレンさんの勧めで、エドワーズ氏は自宅のリビングルームでカセットデッキを使って音声を録音。「Welcome」「You’ve Got Mail」「File’s Done」「Goodbye」というシンプルな4つのフレーズが、後に数億人が耳にするAOLの象徴的なサウンドとなるのでした。
エルウッド・エドワーズ氏
エドワーズ氏の軌跡:ラジオからテレビ、そしてAOLへ
ノースカロライナ州出身のエドワーズ氏は、高校時代からラジオ業界でキャリアをスタート。その後、テレビ局のアナウンサーやラジオ番組の司会者としても活躍しました。多様な経験を経て培われた表現力が、AOLの音声にも活かされているのかもしれません。
予期せぬ反響:世界中を席巻した「You’ve Got Mail」
2019年のインタビューで、エドワーズ氏は当時を振り返り、「あんなことになるとは思いもしなかった。誰も思っていなかっただろう」と語っています。AOLの爆発的な普及に伴い、自身の声が世界中に広がることを想像もしていなかったのです。
コンピューター販売店で山積みになったAOLのCDを見ながら、「これ全部に私の声が入っているのに誰も知らないんだ」と思ったというエピソードからも、当時の状況が伺えます。
インターネット文化への貢献:今も記憶に残るあの声
エドワーズ氏の残した「You’ve Got Mail」の音声は、単なる着信音を超えて、インターネット黎明期を象徴する文化的なアイコンとなりました。90年代のインターネット文化を体験した人々にとって、あの声はノスタルジックな思い出と共に、今も記憶に深く刻まれていることでしょう。
エドワーズ氏の功績を偲び、心よりご冥福をお祈りいたします。