アメリカ経済は好調、株価も絶好調。バイデン政権は自画自賛していましたが、2022年の中間選挙では民主党が敗北しました。その背景には、物価高騰に苦しむ中間層の厳しい現実がありました。この記事では、好景気指標の裏で苦しむ人々の声、そして政府との間に広がる断絶について探ります。
経済指標と庶民感覚の乖離
経済指標は良好で、株式市場も活況を呈しているにもかかわらず、多くのアメリカ国民、特に中間層は生活苦を感じています。ミネソタ州に住むクリスティン・マディさん一家もその一つ。看護師として働くマディさんと重機操縦士の夫は、合わせて年間17万5000ドルもの収入があるにもかかわらず、家計は火の車です。
ミネソタ州の風景
マディさんは、物価高騰の影響で以前のように買い物ができなくなり、安売り店でのまとめ買いが日常となりました。旅行も控えるなど、あらゆる面で節約を強いられています。子供たちの生活にも影響が出ており、息子のジャックさんは生活費と住宅ローンの返済のため、週に80時間働くこともあるといいます。
中間層を苦しめるインフレの波
マディさんのように、中間層は政府の支援プログラムの対象外である一方、生活に余裕があるわけでもありません。日々の生活に追われ、将来への不安を抱える人々は少なくありません。
かつてはデパートで気兼ねなく買い物を楽しんでいたマディさん一家も、今では1ドルショップで日用品を買い揃えるようになりました。食料品も近所のスーパーではなく、より安いディスカウントストアを利用しています。このような生活の変化は、マディさんにとって大きなストレスとなっています。
生活防衛のための苦肉の策
マディさんは食費を抑えるために、ニワトリ、ガチョウ、アヒルを飼い始めました。都会では珍しい光景ですが、物価高騰の影響がいかに深刻かを物語っています。生活必需品の価格高騰は、中間層の生活を圧迫し続けています。
CEOの高額報酬と広がる格差
一方で、アメリカの株式市場は好調で、大企業のCEOは巨額の報酬を得ています。アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)の調査によると、S&P500企業のCEOの平均年収は、平均的な労働者の5倍以上にもなります。
スターバックスの元CEO、ラクスマン・ナラシムハン氏の報酬は1400万ドルを超え、平均的な労働者の1028倍に相当します。後任のブライアン・ニコル氏は、業績次第で年間1億ドル以上を受け取る可能性があります。このような高額報酬と中間層の生活苦の対比は、国民の不満を増幅させています。
政府への不信感と中間層の諦め
バイデン政権はインフレ沈静化に楽観的な見方を示していますが、マディさんのような中間層は政府の言葉に現実味を感じていません。「経済は堅調」という政府の主張は、彼らの生活実感と大きく乖離しているからです。
エコノミストたちも、食品や住宅などの必需品価格の高騰が人々の心理に大きな影響を与えていると指摘しています。投資会社ワーニック・スピアー・ウェルス・マネジャーズのファイナンシャルアドバイザー、ジョーダン・ロドリゲス氏によると、同社の顧客である投資家の間では、インフレが依然として最大の懸念事項となっています。特に中小企業のオーナーは、景気後退よりもインフレを恐れているといいます。
マディさんは、政府から無視されていると感じ、現政権への不信感を募らせています。中間層の苦境を理解しようとしない政府への失望は、中間選挙の結果にも影響を与えたと言えるでしょう。
この記事では、アメリカ経済の好景気指標の裏で苦しむ中間層の現実を描きました。景気回復の恩恵を受けられない人々の声に耳を傾け、格差是正に向けた取り組みが求められています。