中国「独身の日」セール:驚異の売上と変化する消費行動

中国最大のオンラインショッピングイベント「独身の日(11月11日)」は、世界最大級の規模を誇り、日本の年間ネット通販市場に匹敵する売上をわずか数日で叩き出す一大イベントです。しかし、中国経済の停滞を背景に、この巨大セールにも変化の兆しが現れています。

独身の日:売上好調の裏で返品増加、消費行動にも変化

「独身の日」は、1が並ぶ11月11日に中国で開催される世界最大級のオンラインセールです。2023年には約23兆円の売上を記録し、日本の年間ネット通販市場規模(2022年度で22.7兆円)に匹敵する驚異的な数字を叩き出しました。2024年は例年より早くセールが開始され、多くの企業が売上拡大に期待を寄せています。

中国のセール会場中国のセール会場

日用品大手のサンスターも10年前からこのセールに参戦し、持続的な成長を遂げています。サンスター上海の藤下佳之副総経理は、爆発的な売上よりも持続的な成長を重視する姿勢を示しています。

しかし、中国経済の停滞は消費者の行動にも影響を与えています。「背伸び消費」から「身の丈消費」へと変化し、衝動買いが減少傾向にあると藤下副総経理は指摘します。サンスターも過剰な価格競争ではなく、ブランド価値の伝達に注力する戦略に転換しています。

返品増加という新たな課題

広東省広州市のある業者は、20人以上のインフルエンサーと提携し、商品の在庫管理や発送業務を代行しています。独身の日セール期間中は、1日に1万個以上の荷物を発送し、深夜まで作業が続くといいます。

返品された商品返品された商品

しかし、この業者を悩ませているのが「返品」の問題です。中国では、オーダーメイド品などを除き、7日以内であれば理由を問わず返品が可能です。セール期間中は、購入特典だけを受け取って商品を返品するケースが後を絶たず、返品にかかる送料は販売側の負担となります。この業者の返品率は約40%に達し、1日3000~4000件の返品が発生しているといいます。

中国メディアによると、あるアメリカの高級アパレルブランドは、約340億円の売上を記録したものの、返品率はなんと95%に達したと報じられています。

日本のウェブマーケティング企業Unbotの淡路恒平主管(仮名)は、消費者の嗜好を的確に捉え、効率的な投資を行うことが重要だと指摘します。

今後のEC戦略:返品対策の重要性

「独身の日」は、依然として巨大な売上を生み出す魅力的な市場です。しかし、変化する消費行動や返品増加といった新たな課題に対応するため、企業は「売る」だけでなく「返品されない戦略」を構築する必要性に迫られています。 消費者のニーズを的確に捉え、ブランド価値を効果的に伝えることで、持続的な成長を実現できるかが今後の鍵となるでしょう。