(CNN) 不法移民を悪者扱いする言説と、米大統領に復帰後は大規模な強制送還を実施するとの本人の公約を考慮すれば、トランプ前大統領1期目に強制送還が実のところ減少していたというのはある種の衝撃だ。
またバイデン政権が前政権からのペースを維持し、トランプ氏と同様の人数を強制送還しているというのも驚くべきことだ。
これらの数字は多くの背景を欠いている。トランプ氏は任期中、移民問題に極めて注力。南部の国境に壁を建設しようとし、イスラム教徒が大半を占める国々からの渡米を制限した。他にも米国民と世界に対し、米国がそこまで外国人にとって居心地のいい国ではないと合図を送っていた。
同氏はまた、職場での移民の摘発も承認した。第1次政権で移民税関捜査局(ICE)局長代理を務め、次期政権でも国境管理の包括的責任者に任命されたトム・ホーマン氏は11日、FOXニュースとのインタビューで今後はそうした摘発や強制送還が増加するとの見通しを示している。
「政権自体は1期目と同様になるだろうが、それら(強制送還)は格段に増える。バイデン政権下で、1000万人が不法入国しているからだ」(ホーマン氏)
オバマ氏がトランプ氏より多くの人々を強制送還した理由
1期目のトランプ氏は大規模な強制送還も公約に掲げ、実際に150万人以上を任期中に送還した。米シンクタンク、移民政策研究所の政策アナリスト、キャスリーン・ブッシュジョセフ氏が明らかにした。
しかしこの数字はオバマ政権1期目に送還された290万人の約半分であり、2期目の190万人も下回る。ブッシュジョセフ氏と筆者が共有する更新後の計算によれば、バイデン政権の149万人と同等ということになる。これらの数字には新型コロナの時期に国境で追い返された数百万人は含まれていない。移民を追い返す措置はトランプ政権下で発効し、バイデン政権下の大部分で採用されていた。
そうした数字には多くの背景説明が必要になる。ブッシュジョセフ氏によるとバイデン氏の強制送還は国境地域に焦点を当てていたが、トランプ氏とオバマ氏の数字には、米国内からの強制送還が多く含まれている。
オバマ氏による強制送還はメキシコから単身で入国した男性に集中していると、ブッシュジョセフ氏は指摘。現在の不法移民はさらに遠くの国から家族単位で米国にやってくる公算が大きい。この点が移民を引き返させる手続きを複雑にしている。物流上の問題だけでなく、多くの国は本国への送還を受け入れないからだ。メキシコはバイデン政権との合意の一環として、異なる国々からの人々の受け入れを開始した。
「どの政権にとっても強制送還を扱う上で重要な背景は、米国の移民システムが極度に時代遅れで対応不能、資源も足りていないということだ」とブッシュジョセフ氏。同氏によれば、米国内には現在、国外退去通知を受け取りながらも送還されていない移民が130万人いる。
強制送還の数が減少したもう一つの要因は、現地の法執行機関の多くが連邦政府の移民当局への協力を停止したことだ。この転換はオバマ政権で始まり、トランプ政権で拍車がかかったと、リバタリアン系シンクタンクのケイトー研究所で移民研究を統括するデービッド・ビアー氏は指摘する。