映画製作の舞台裏には、私たち観客が想像もつかないほどのドラマが隠されています。血と汗と涙の結晶とも言える努力、そして奇跡的な巡り合わせによって、名作と呼ばれる映画が誕生するのです。しかし、華やかなスクリーンの裏側には、危険も潜んでいます。出演者はもちろんのこと、スタッフにも予期せぬ事故が起こりうる、まさに命懸けの現場と言えるでしょう。今回は、そんな撮影現場で起きた悲劇、そして「呪われた映画」として語り継がれる作品の中から、『クロウ/飛翔伝説』(1994)にスポットを当て、その背景にある物語をご紹介します。
不慮の事故で夭逝したブランドン・リー：ハリウッドの未来を担うはずだったスター
『クロウ/飛翔伝説』は、ジェームズ・オバーによる人気コミック「ザ・クロウ」を原作としたダークファンタジー映画です。愛する人と共に殺害されたロックミュージシャン、エリック・ドレンバンが、1年後に神秘的な力によって蘇り、復讐を果たす物語。主人公エリックを演じたのは、かのブルース・リーの息子、ブランドン・リーでした。しかし、この作品は悲しいことに、彼の遺作となってしまったのです。
ブランドン・リー
1993年3月31日の深夜、悲劇は起こりました。ギャング役のマイケル・マッシーがブランドン・リーを銃で撃つシーンの撮影中、空砲のはずの銃から発射された弾丸がリーの腹部を貫通し、脊髄に達するという大事故が発生したのです。緊急手術が行われましたが、数時間後、リーは帰らぬ人となりました。
後の調査で、銃に不備があったこと、そして銃身チェックの怠慢が事故の原因だと判明しました。マッシーは罪には問われませんでしたが、この事故による精神的なショックは大きく、しばらくの間、映画界から姿を消すことになりました。
デジタル技術で完成へ：公開後、世界中で大ヒット
主演俳優の突然の死。映画の完成は絶望的かと思われました。しかし、ハリウッドは諦めませんでした。最新技術を駆使したデジタル合成によってリーの不在を補い、作品を完成させたのです。そして公開された『クロウ/飛翔伝説』は、世界中で大ヒットを記録しました。
映画評論家の山田一郎氏（仮名）は、「この作品は、ブランドン・リーの類まれなる才能と、映画製作陣の強い意志が奇跡的に融合した結果だ」と語っています。リーの演技は、まさに鬼気迫るもので、観る者の心を掴んで離しません。もし彼が生きていれば、間違いなくハリウッドを代表するアクションスターになっていたことでしょう。
映画『クロウ/飛翔伝説』
呪われた映画：悲劇を乗り越えて生まれた傑作
『クロウ/飛翔伝説』は、ブランドン・リーの死という悲劇的な事件によって、「呪われた映画」と呼ばれるようになりました。しかし、同時に、彼の遺志を継いだスタッフたちの努力によって完成された、感動と興奮に満ち溢れた傑作でもあります。
この作品は、私たちに映画製作の舞台裏にある様々なドラマ、そして俳優たちの命懸けの演技を改めて認識させてくれます。ブランドン・リーの早すぎる死は、映画史における大きな損失と言えるでしょう。しかし、彼の魂は『クロウ/飛翔伝説』の中で永遠に生き続け、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。
