APEC首脳会議出席のためペルー入りした石破首相。バイデン大統領や習近平国家主席との会談は予定通り進むものの、その後のトランプ前大統領との会談調整は難航している。帰国前に米国に立ち寄り、再選を目指すトランプ氏との直接会談を模索するも、トランプ氏の多忙なスケジュールの壁に阻まれているようだ。
APECでの国際舞台は、石破首相にとって外交手腕を試す絶好の機会となるはずだった。しかし、肝心のトランプ氏との会談は暗礁に乗り上げ、「ドナルド」「シゲル」と呼び合う親密な関係どころか、「シゲル・パッシング」の様相を呈している。
石破首相がAPEC首脳会議に出席する様子
トランプ氏の関心は次期政権人事?石破首相との電話会談はわずか5分
トランプ氏は次期政権の人事を優先し、就任前の各国首脳との面会を控えていると報じられていた。しかし、アルゼンチンのミレイ大統領とは再選後初の会談を行ったことが明らかになり、石破首相との会談実現はさらに不透明感を増している。
石破首相はトランプ氏との電話協議で早期会談の実現で一致したと発表していたが、実際にはわずか5分で終了。自民党の小野寺政調会長は、トランプ氏が会合を中座したためだと説明したが、週刊新潮はトランプ氏が一方的に電話を切ったと報じている。
強硬派ライトハイザー氏のUSTR代表復帰で日米通商摩擦の懸念
トランプ氏とミレイ大統領
トランプ政権の通商政策トップには、USTR代表を務めたロバート・ライトハイザー氏の復帰が有力視されている。「タリフ・マン」の異名を持つトランプ氏と、対日強硬派として知られるライトハイザー氏のタッグは、日本経済にとって大きな脅威となる可能性がある。
ライトハイザー氏は、日本に貿易黒字の是正を強く求めており、日本製鉄によるUSスチール買収にも反対の立場をとっている。高関税政策を掲げるトランプ政権下で、ライトハイザー氏がUSTR代表に復帰すれば、日米間の通商摩擦が激化する恐れがある。
EV補助金廃止で日本自動車産業に試練?専門家は早期会談の必要性を強調
トランプ氏はEV補助金制度の廃止も示唆しており、EV化の遅れが指摘される日本の自動車産業にとっては大きな試練となるだろう。国際政治学者の五野井郁夫氏(高千穂大学教授)は、「米国第一主義のトランプ政権は、EV分野でも高関税を課してくる可能性がある。日本の基幹産業である自動車産業を守るためにも、石破首相は早期にトランプ氏と会談し、関係構築に努めるべきだった」と指摘する。
石破首相の外交手腕が問われる重要な局面。トランプ氏との会談実現の行方、そして今後の日米関係の展望に注目が集まっている。