医療現場の崩壊が叫ばれる中、看護師や介護士の待遇改善を求める声がますます高まっている。深刻な人手不足、増え続ける赤字病院、そして過去最多ペースで進む介護事業者の倒産。日本の医療・介護の未来を守るためには、今こそ抜本的な改革が必要とされている。
賃上げだけでは解決しない医療・介護現場の苦境
2024年の診療報酬・介護報酬改定では、ベースアップ評価料や新介護加算が盛り込まれたものの、その効果は限定的だ。他産業の賃上げ率が5.0%程度であるのに対し、医療・福祉産業はわずか2.5%にとどまっている。これは、医療・介護従事者の献身的な努力に見合うものと言えるだろうか。
医療従事者の待遇改善を求めるデモの様子
財務省前で行われた宣伝行動では、全国から集まった看護師や介護士たちが、現場の厳しい現実を訴えた。低賃金、長時間労働、そして重すぎる責任。これらの負担が、医療・介護従事者の離職を加速させ、さらなる人手不足を招いている。
介護事業者の倒産が過去最多ペース:持続不可能な現状
東京商工リサーチの調査によると、2024年1月から10月までの老人福祉・介護事業の倒産件数は既に145件に達し、過去最多を記録した2022年の年間倒産件数を超えている。これは、医療・介護業界の経営がいかに厳しい状況に置かれているかを如実に示している。
医療・介護機関は、民間企業のように自由に利益を追求することができない。国によって定められた診療報酬・介護報酬に依存せざるを得ない構造が、慢性的な赤字経営を生み出しているのだ。
経営悪化の連鎖:人手不足と離職の悪循環
医療経営コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「低い診療報酬・介護報酬が、人材確保の難しさ、離職率の高さ、そして残された従業員の負担増という悪循環を生み出している」と指摘する。この悪循環を断ち切るためには、国による抜本的な財政支援が不可欠だ。
医療・介護の未来を守るために:抜本的な改革が必要
医療・介護は、国民の生活に不可欠な社会基盤である。この基盤が崩壊すれば、私たちの生活にも大きな影響が及ぶことは避けられない。
日本医療労働組合連合会(医労連)は、全額公費による追加の賃上げ施策や、物価高騰や人件費増を補えるだけの診療報酬・介護報酬の抜本的な引き上げを求めている。
国民一人ひとりが、医療・介護の現状に関心を持ち、その重要性を認識することが、未来を守る第一歩となるだろう。