韓国政界に激震が走った。12月3日夜、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が突如「非常戒厳」を宣言。1979年以来45年ぶり、87年の民主化以降では初めての事態に、国民は驚きと不安に包まれた。宣言からわずか6時間後、国会の解除要求決議案可決を受け解除されたものの、この強硬手段は尹大統領への批判の火に油を注ぐ結果となった。野党は弾劾訴追案を提出、与党内からも批判の声が上がるなど、尹大統領の政治生命は風前の灯火と言えるだろう。
戒厳令発令の背景と波紋
尹大統領は、野党が多数を占める国会における弾劾追訴案提出の動きを「行政の麻痺」と非難、「犯罪者の巣窟」とまで言い放ち、非常戒厳を正当化した。北朝鮮の脅威や「従北反国家勢力」の排除を理由に挙げたものの、この強硬手段は国内外に大きな波紋を広げた。
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戒厳令下では、全ての政治活動が禁止され、報道・出版も統制下に置かれる。戒厳司令部が発足し、軍部隊が国会に進入するなど、一時は緊迫した状況となった。しかし、国会の迅速な対応により、大きな混乱なく解除に至った。
弾劾訴追への動きと与党の苦悩
野党は尹大統領の行動を「明確な憲法違反」と断じ、内乱罪での告発と弾劾手続きを進める構えだ。弾劾訴追案は既に国会に提出され、可決されれば大統領の権限は停止、憲法裁判所の判断を待つことになる。
与党「国民の力」は、尹大統領の脱党、内閣総辞職、国防相解任などを提案するなど対応に苦慮している。党内では親尹派と反尹派の対立が深まり、弾劾訴追案への対応も意見が分かれている。大統領の弾劾は政権運営に大きな支障となることは明白で、与党の苦悩は深まるばかりだ。
広がる批判の輪と揺らぐ政権基盤
国民の不安は高まり、主要都市では尹大統領の退陣を求める集会が開催された。ソウルではろうそくを手に抗議する市民の姿も見られ、2016年の朴槿恵(パク・クネ)前大統領弾劾時の情景を彷彿とさせる。弁護士団体からも批判の声が上がり、尹大統領への風当たりはますます強まっている。
今回の騒動は、尹政権の基盤を大きく揺るがす事態となった。今後の政権運営は極めて困難な状況に陥る可能性が高く、早期の政権交代の可能性も否定できない。韓国政治の混迷は、さらに深まることが予想される。
専門家の見解
神戸大学大学院の木村幹教授は、今回の戒厳令発令は法的要件を満たしていない可能性が高く、大統領弾劾に繋がる「重大な違法行為」と指摘する。与党内からも造反が出る可能性が高く、弾劾訴追案が可決される公算は大きいと分析。尹政権は事実上「死に体」であり、任期を全うできる可能性は極めて低いとの見方を示した。
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今後の韓国政界の動向に、国内外から大きな注目が集まっている。