日本の物流業界は深刻なドライバー不足と積載率の低さに直面しています。EC市場の拡大による物流量増加の一方で、少子高齢化による労働力不足は深刻さを増し、物流業界の未来は大きな課題を抱えています。本記事では、ドライバー不足の現状と、積載率向上に向けた様々な取り組み、そして未来の物流の姿について解説します。
ドライバー不足の深刻化と2024年問題
物流業界、特に長距離トラックドライバーは高齢化が進み、長時間労働が常態化していました。2024年問題として叫ばれる時間外労働時間の上限規制導入は、ドライバー不足に拍車をかけることが懸念されています。宅配便の取扱個数は増加し続けており、経済産業省の予測では2030年には輸送キャパシティが34.1%不足するとされています。このままでは「モノが運べなくなる」という危機的状況に陥る可能性も否定できません。
長距離トラックの運転席
積載率向上への取り組み:空気を運ぶ状態からの脱却
ドライバー不足による輸送力低下を補うためには、積載率の向上が不可欠です。現状の平均積載率は約40%と、トラックのキャパシティを十分に活用できていません。その原因として、復路の空荷や、多品種少量化・短納期化への対応などが挙げられます。
ある物流企業では、様々な荷物を「混載」することで積載率を60%まで向上させ、3人分の荷物を2人で運べるようにする取り組みを行っています。さらに、2台のトラックをつないだ「ダブル連結トラック」の活用により、3人分の荷物を1人で運べるようにするなど、積載率70~80%を目指した様々な施策を展開しています。パレットを使った荷姿の標準化や、容積を最大化する車両の開発なども進められており、省人化・CO2削減にも貢献しています。物流コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「荷主との協力が不可欠であり、業界全体で積載効率向上に取り組む必要がある」と指摘しています。
物流MaaS:未来の物流システム
経済産業省は、物流MaaS(Mobility as a Service)の実現像として、物流を幹線輸送、結節点、支線配送の3つの領域に分け、最適化を目指しています。データ連携による異なるメーカーでの隊列走行、パレット・梱包資材の標準化、ラストワンマイルでの共同輸送など、様々なプレイヤーが連携することで、効率的な物流システムを構築しようとしています。
物流センターでの作業風景
幹線輸送における自動運転技術の開発も進んでおり、ダブル連結トラックの運用や、後続車無人隊列走行の実証実験も行われています。完全自動運転の実現にはまだ時間が必要ですが、段階的に導入が進んでいくと見込まれています。自動運転技術の進歩は、ドライバーの長時間労働や過酷な労働環境の改善にもつながると期待されています。
ドライバーの働き方の変化と未来への展望
自動運転技術や物流MaaSの導入により、ドライバーの働き方も大きく変化すると予想されます。中継地点での荷物のリレーや、自動運転による運転業務からの解放など、ドライバーの負担軽減につながる施策が期待されています。また、荷姿の標準化や自動フォークリフトの導入により、荷役作業の負担も軽減されるでしょう。
物流業界は、技術革新と業界全体の協力によって、ドライバー不足と積載率の課題を克服し、持続可能な物流システムを構築していくことが求められています。