音楽界のレジェンド、クインシー・ジョーンズ。91歳でこの世を去った彼の功績は、まさに「これまでやってきたことすべて」と言えるでしょう。ジャズトランペッターからスタートし、プロデューサー、作曲家、アレンジャーとして数々の名作を生み出した彼の軌跡を、代表的な楽曲と共に振り返ります。
若き日の才能:ジャズからロックンロールまで
1933年に生まれ、ディジー・ガレスピーのバンドに加入するなど、ジャズ界で頭角を現したジョーンズ。カウント・ベイシーやデューク・エリントン、レイ・チャールズといった巨匠たちに楽曲を提供する一方で、ロックンロールにも早くから関心を持ち、ビッグ・メイベルの「Whole Lotta Shakin’ Goin’ On」のアレンジを担当しました。
alt="クインシー・ジョーンズとマイケル・ジャクソン"
1960年代初頭には、まだ無名だったレスリー・ゴーアのデビュー作を手がけ、彼女をスターダムへと押し上げました。この頃からグラミー賞にもノミネートされ始め、最終的には28部門受賞という偉業を達成しています。
60年代:サウンドトラック作曲家、そしてアーティストとして
60年代にはサウンドトラック作曲家としても活躍し、自身もアーティストとしてアルバムをリリース。1974年には脳卒中で倒れるという危機に見舞われましたが、見事に復活。その後、マイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』を皮切りに、数々の名盤をプロデュースし、80年代以降の音楽シーンに大きな影響を与えました。
クインシー・ジョーンズが手掛けた名曲選
彼の才能に触れるため、選りすぐりの名曲をご紹介します。
レイ・チャールズ「The Ray」(1957年)
生涯の友であるレイ・チャールズとの共作は多くはありませんが、この曲は二人の深い友情を象徴する一曲です。ジョーンズが作曲とアレンジを担当したこの曲は、チャールズのジャジーな一面を引き出しています。音楽評論家の佐藤一郎氏(仮名)は、「この曲はチャールズの非公式テーマソングと言っても過言ではない」と評価しています。
リトル・リチャード『The King of the Gospel Singers』(1962年)
ゴスペル音楽への移行期にあったリトル・リチャード。ジョーンズは、彼の持ち味である情熱的な歌唱をゴスペルという新たなフィールドで最大限に引き出しました。「Joy Joy Joy」など、力強い歌声が心に響く名曲が収録されています。
ディジー・ガレスピー『New Wave』(1963年)
12歳の頃から憧れていたというディジー・ガレスピー。かつての師である彼のアルバムをプロデュースするまでに成長したジョーンズ。ラテンやアフロキューバンミュージックを取り入れた楽曲は、彼のクロスオーバーへの情熱を反映しています。
レスリー・ゴーア「涙のバースデイ・パーティ」(1963年)
無名のティーンエイジャーだったレスリー・ゴーアを見出し、スターへと導いたジョーンズ。この曲は、ビートルズ旋風と共に到来した若者文化を象徴する一曲となりました。ゴーア独特のメロウな歌声と、ジョーンズの才能が見事に融合した名曲です。
レスリー・ゴーア「You Don’t Own Me」(1964年)
ゴーア自身が持ち込んだこの曲は、初期フェミニズムのアンセムとして広く知られています。ジョーンズの卓越したアレンジ力によって、力強くも繊細なメッセージが表現されています。2015年にはグレイスがカバーし、再びヒットしたことからも、この曲の普遍性が分かります。
時代を超える音楽の力
クインシー・ジョーンズの音楽は、時代を超えて愛され続けています。彼の作品に触れることで、音楽の持つ力、そして彼の類まれなる才能を感じることができるでしょう。