餌づけされたハトやカラスによる大量のふんや鳴き声についての苦情が相次いでいるとして、大阪市が無責任な餌やりを禁じる条例制定を検討していることが、分かった。住民からの陳情を受け、松井一郎市長は「悪質な餌やりは動物愛護ではなく自己満足だ」と問題視。罰則付きの条例制定を目指し、関係部局に規制の具体的な内容をまとめるよう指示した。
陳情を行ったのは、大阪市住吉区の住民たち。住民らは今月10日、野鳥への餌やり行為を規制する条例制定を求め、市議会議長にあてて陳情書を提出した。松井市長は翌11日の定例会見で「きちっとルールを設けて、生活環境を守りながら動物愛護が実現できる体制をつくる」と述べ、条例制定の準備を関係部局に指示したと説明した。
市では、年内から来春の議会提案を目標に、対象動物や罰則の内容を検討中。詳細を詰め、警察との調整やパブリックコメントを行う。担当者は「実効性のある案をスピード感を持って作る」としている。
大阪市や地元住民らによると、住吉区内の住宅街ではおよそ10年前から、連日にわたって、数人の人が路上にパンくずや米をまき、これを目当てに多くのハトやカラスが集まっている。
このため、周辺の住民からは、「鳴き声がうるさい」などの苦情が続出。大量のふんが民家の屋根や路面にまき散らされるという被害もあるという。
区役所や警察は餌やりをする人たちに、注意や指導を繰り返してきたが、餌やりを禁じる規制がないこともあり、状況は変わっていないという。
餌やりの規制をめぐっては、大阪府箕面市が平成23年、住民の健康や生活環境の保全を目的に、カラスを対象にした条例を施行。行政指導に従わない悪質違反者には、氏名公表や10万円以下の罰金を科せるようにした。同市によると、条例化が抑止力となり、これまで刑事告発に至った例はない。
また京都市も罰則付きの条例で野生動物への不適切な餌やりを禁止している。昨年は野良猫への餌やりに対し、156件の現地指導を行った。規制により野良猫の収容や殺処分が減り、動物愛護の面でも効果を上げているという。