イタリア観光業の闇:マフィアが暗躍、巨額の利益を搾取か

イタリアの美しい街並み、歴史的な建造物、そして美味しい料理…多くの観光客を魅了するこの国には、残念ながら暗い影が潜んでいる。調査機関デモスコピカの報告によると、イタリアのマフィアは観光業から年間33億ユーロ(約5300億円)もの利益を上げており、今後の大規模イベントでも更なる収益を狙っているという衝撃的な事実が明らかになった。

マフィアの観光業進出:その手口とは?

マフィアは、ホテルやレストランなど、経営難に陥っている企業をターゲットに、巧妙な手口で利益を搾取している。資金繰りに苦しむ企業に対し、資金援助を申し出ることで経営権を握り、不正に得た資金の洗浄や高利貸し、恐喝などを行っているのだ。

聖年と冬季五輪:マフィアの新たな標的

2025年のローマ・カトリック教会の聖年や2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪といった大規模イベントも、マフィアにとっては格好の標的となっている。多くの観光客が訪れるこれらのイベントを利用し、更なる利益を上げることが予想されている。

イタリア・ローマで、コロッセオを訪れるために列をつくる観光客(2024年7月3日撮影)。イタリア・ローマで、コロッセオを訪れるために列をつくる観光客(2024年7月3日撮影)。

ヌドランゲタ:イタリアマフィアの頂点

デモスコピカの報告書によると、カラブリア州を拠点とする犯罪組織「ヌドランゲタ」は、イタリアのマフィア全体の利益の半分以上を占めているという。他の犯罪組織、例えばカンパニア州の「カモッラ」、シチリア州の「マフィア」、プーリア州の組織犯罪集団も観光業で巨額の利益を上げているが、ヌドランゲタの影響力は突出している。

北部への進出:マフィアの勢力拡大

マフィアの拠点は主に南部だが、近年では裕福な北部の観光業にも進出しており、約15億ユーロ(2400億円)もの利益を上げていると推定されている。これは、マフィアの勢力拡大を如実に示すものであり、イタリア経済全体への深刻な脅威となっている。

7000社以上が標的に? 経営難の企業は要注意

デモスコピカのトップ、ラファエレ・リオ氏は、流動性と債務危機に苦しむ観光業界の企業7000社以上が、マフィアの標的となる可能性があると警告している。これらの企業は、マフィアの「支援の申し出」を受け入れやすく、結果的に犯罪組織の支配下に陥ってしまう危険性が高い。

マフィアによる「犯罪福祉制度」:その実態

リオ氏によれば、マフィアは、資金難の企業家に対し、資金援助や負債の肩代わりを申し出ることで、あたかも福祉制度のように振る舞っている。しかし、その実態は、企業の支配権を奪い、マネーロンダリングや高利貸し、恐喝を行うための手段に過ぎない。

イタリア経済への影響:合法経済を窒息させる脅威

マフィアの観光業への進出は、イタリア経済全体に深刻な影響を与えている。不正に得た資金が合法経済に流れ込み、健全な経済活動を阻害するだけでなく、観光業のイメージダウンにも繋がりかねない。

マフィアによる観光業への浸透は、イタリアが抱える深刻な課題であり、早急な対策が求められている。観光客も、この問題を認識し、旅行の際には十分な注意を払う必要があるだろう。