韓国で、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領に対する慰謝料請求訴訟の準備が進められている。発端となったのは「非常戒厳」宣布をめぐる国民の不安と怒りだ。この訴訟は、大統領の行動が国民に精神的損害を与えたとして、1人あたり10万ウォン(約1万1000円)の慰謝料を求めるものだ。
訴訟の背景:戒厳宣言と国民の反応
2016年のパク・クネ(朴槿恵)大統領弾劾審判で国会側代理人を務めたイ・グムギュ弁護士と、チョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領の回顧録訴訟で被害者を代理したキム・ジョンホ弁護士が、今回の訴訟を共同で提案した。彼らは、戒厳発令の可能性を示唆する大統領の発言が、国民に大きな不安と恐怖を与えたと主張している。国民の力による民主主義の守護を訴え、広く市民の参加を呼びかけている。
緊急国民向け特別談話を発表するユン・ソンニョル大統領
訴訟の進め方:象徴的な「105人」の原告
訴訟への参加資格は19歳以上の韓国国民。各地域で105人の原告を募る計画だ。この「105人」という数字は、ユン大統領の弾劾訴追案の採決を棄権した与党「国民の力」所属議員の人数と同じであり、国民の意思表示としての象徴的な意味を持つ。弁護士費用は無料で、勝訴した場合の慰謝料は全額寄付される予定だ。
専門家の見解:民主主義と法の支配
憲法学者であるパク・ミンソク教授(仮名)は、「今回の訴訟は、大統領の権力行使に対する国民の監視機能の重要性を改めて示すものだ」と指摘する。「戒厳発令は、民主主義の根幹を揺るがす重大な行為であり、国民の権利と自由を著しく制限する可能性がある。法の支配に基づき、厳正な判断が求められる」と述べている。
市民の声:不安と期待
訴訟への参加を表明した市民からは、「大統領の発言は、国民を不安に陥れるものであり、決して許されるべきではない」「この訴訟を通じて、民主主義の大切さを改めて認識してほしい」といった声が上がっている。一方で、訴訟の行方を慎重に見守る声も少なくない。
今後の展開:司法の判断と国民の反応
今後の裁判の行方と、それに対する国民の反応は、韓国社会に大きな影響を与えるだろう。この訴訟は、民主主義と法の支配の原則、そして国民の権利と自由の重要性を改めて問う契機となるだろう。