クルド人へのヘイトスピーチ:深刻化する排斥と必要な対策とは?

近年、埼玉県川口市や蕨市に在住するクルド人コミュニティに対するヘイトスピーチが深刻化しています。本記事では、ヘイトスピーチの現状、その影響、そして私たちにできる対策について掘り下げていきます。

ヘイトスピーチの現状と深刻な影響

2023年10月20日、川口市のSKIPシティで、クルド人へのヘイトスピーチ問題を考えるシンポジウムが開催されました。「在日クルド人と共に」が主催したこのシンポジウムでは、ヘイトスピーチがもたらす深刻な害悪について議論が交わされました。

クルド人へのヘイトスピーチが目立ち始めたのは、2022年5月頃からです。入管法改正への反対の声を上げたクルド人に対し、SNS上を中心に「国へ帰れ」といった攻撃的な言葉が浴びせられるようになりました。

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その後、ヘイト団体によるデモや街宣活動が活発化し、中には「自警団」を名乗り、クルド人住民を盗撮するなどの嫌がらせ行為を行う者も現れました。

シンポジウムで、龍谷大学教授の金尚均さんは、ヘイトスピーチはマイノリティの人々の生きる価値を奪うと指摘しました。金さん自身も過去にヘイトスピーチの被害に遭っており、その恐怖を改めて訴えました。

日本クルド文化協会事務局長のワッカス・チョーラクさんも、ヘイトスピーチが子どもたちに悪影響を与えていると懸念を示しました。「パパは悪いことしているの?」と尋ねる子どもや、日本人から「クルド人とは遊ぶな」と言われた子どももいるそうです。

ヘイトクライムの発生と差別意識の蔓延

クルド人の多くは解体業に従事しており、廃材を積んだトラックを「クルドカー」と呼び、盗撮するなどの嫌がらせも横行しています。クルド人経営の会社で働く日本人女性は、トラックを運転する際に感じる視線や緊張感について語り、偏見の目にさらされているクルド人たちの心情を代弁しました。

師岡康子弁護士は、ヘイトスピーチの影響で隣人の態度が変わり、ごみを捨てられたり、タバコの吸い殻を置かれたりするようになったクルド人住民がいると報告しました。入居差別も起きているといい、ヘイトスピーチが差別や偏見に基づくヘイトクライムに繋がっていると警鐘を鳴らしました。

ヘイトスピーチへの対策:条例制定の必要性

ヘイトスピーチを食い止めるためには、国レベルでの法整備だけでなく、地方自治体による条例制定も重要です。川崎市では刑事罰を科す条例が効果を発揮しており、悪質なヘイトスピーチが減少したとされています。

師岡弁護士は、人種差別撤廃条約やヘイトスピーチ解消法に基づき、一人ひとりが声を上げ、議会に働きかけることで条例制定を実現できると訴えました。条例制定は国の法整備を後押しする力にもなると強調しました。

まとめ:共生社会の実現に向けて

ヘイトスピーチは、人権を侵害するだけでなく、社会の分断を招く深刻な問題です。クルド人へのヘイトスピーチの現状を理解し、共生社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があります。