韓国軍が運用する軍事偵察衛星3号機が、2024年12月21日夜(日本時間)、米国カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地からスペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられ、軌道投入に成功しました。打ち上げ後、地上局との交信にも成功し、今後の運用試験を経て本格稼働となる予定です。今回の打ち上げ成功は、朝鮮半島情勢の緊張が高まる中、韓国の防衛力強化に大きく貢献するものと期待されています。
常に監視の目を:SAR搭載で全天候型偵察を実現
今回の3号機には、合成開口レーダー(SAR)が搭載されています。SARは、地表に電波を照射し、その反射波を分析することで画像を生成する技術です。この技術の最大のメリットは、天候や昼夜に左右されずに観測できる点にあります。雲や暗闇に遮られることなく、北朝鮮の軍事活動を24時間体制で監視することが可能になります。
韓国軍偵察衛星3号機のイメージ図
韓国型3軸体系完成へ:偵察衛星網構築で抑止力向上
韓国軍は、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗するため、「韓国型3軸体系」と呼ばれる防衛戦略を推進しています。これは、(1)ミサイル発射の兆候を捉え先制攻撃する「キルチェーン」、(2)発射されたミサイルを迎撃する「韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)」、(3)攻撃を受けた場合に指導部等へ報復攻撃を行う「大量反撃報復(KMPR)」の3つから構成されています。
今回の3号機打ち上げは、この3軸体系、特にキルチェーンの強化に大きく貢献すると見られています。北朝鮮の軍事施設やミサイル基地などを常時監視することで、早期の兆候把握と的確な対応が可能になります。韓国国防部は、独自のSAR衛星網の構築により、3軸体系の完成度がさらに高まると期待を寄せています。
5機の偵察衛星で監視網構築を目指す
韓国軍は、合計5機の偵察衛星を打ち上げる計画を進めています。すでに1号機(光学センサー搭載)は昨年12月に打ち上げられ、今年8月から運用を開始。2号機(SAR搭載)も今年4月に打ち上げられ、来年2月の運用開始を予定しています。今回の3号機もSARを搭載しており、1号機、2号機と連携することで、より精度の高い情報収集が可能になります。今後の4号機、5号機の打ち上げにより、さらに強固な偵察衛星網が構築される予定です。
専門家の見解:北朝鮮への抑止力向上に期待
軍事専門家の佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の3号機打ち上げ成功は、韓国の防衛力強化における重要な一歩だ」と指摘します。「SAR搭載衛星による全天候型偵察能力の獲得は、北朝鮮に対する抑止力の向上に大きく寄与するだろう。今後、さらに多くの偵察衛星が打ち上げられることで、朝鮮半島情勢の安定化にも繋がる可能性がある」と述べています。
まとめ:更なる安全保障へ
3号機の打ち上げ成功は、韓国の安全保障にとって大きな前進です。全天候型の監視体制を強化することで、北朝鮮の動向をより正確に把握し、適切な対応が可能になります。今後の偵察衛星網の完成に期待が高まります。