日本は深刻な少子化問題に直面しています。日本総合研究所の試算によると、2024年の出生数は前年比5.8%減の68.5万人と予測されています。これは、1994年の出生数123万人と比較すると、ほぼ半減という衝撃的な数字です。合計特殊出生率も1.15を割り込む見通しとなっており、少子化対策は待ったなしの状況です。
出生率の地域格差:西高東低の謎
注目すべきは、出生率に都道府県によって大きな差があることです。沖縄県は1.60と最も高く、長崎県、宮崎県が1.49、鹿児島県が1.48、熊本県が1.47と続きます。一方、東京都は0.99と最も低く、北海道1.06、宮城県1.07、秋田県1.10、京都府1.11と続きます。つまり、西日本、特に九州・沖縄地方で高く、東日本、特に東北・北海道地方で低い「西高東低」の傾向が見られます。
九州地方の風景
西高東低の背景:従来の常識を覆す現状
興味深いことに、高度経済成長期以前は「東高西低」でした。一体何がこの逆転現象を引き起こしたのでしょうか?第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、西日本ほど男性の未婚率が低く、女性が30代、40代でも子供を産む傾向があると指摘しています。しかし、その根本原因は未だ解明されていません。
都会の風景
憶測と偏見:気候や文化の影響は?
インターネット上では、「西日本は温暖だから」、「九州には伝統的な家族観が残っているから」といった憶測が飛び交っています。しかし、中村学園大学特任講師の益田仁氏は、これらの俗説に警鐘を鳴らします。高度経済成長期以前は東高西低であったことから、気候の影響は否定されます。また、「九州は男尊女卑」といったステレオタイプも的外れであると指摘しています。
少子化対策への課題:真の原因究明と効果的な施策
少子化問題の解決には、出生率の地域格差を生み出す真の原因を究明し、地域特性に合わせた効果的な対策を講じる必要があります。例えば、「子育て支援の充実」、「ワークライフバランスの改善」、「女性の社会進出支援」などが考えられます。これらの施策を、地域の実情に合わせて柔軟に展開していくことが重要です。今後の日本社会の持続可能性のためにも、少子化問題への取り組みは喫緊の課題と言えるでしょう。