パチンコ店店長として激務に追われ、自ら命を絶った男性。当初は労災不認定とされたこの痛ましい事件、ついに遺族への補償支給が決定しました。今回は、この逆転劇の背景と、過労死問題の深刻さを改めて考えます。
労基署の当初判断:業務外?精神障害なし?
埼玉県内のパチンコ店の店長を務めていた41歳男性は、近隣の新規店舗の店長も兼務することになったわずか半年後、店舗倉庫で自殺しました。遺族は過重な業務負担による精神的苦痛が原因だと訴え、労災申請を行いました。しかし、労働基準監督署は「業務上の事由による死亡とは認められない」「精神障害の発症もない」として、遺族補償給付の請求を却下しました。
alt パチンコ店の店内イメージ
遺族側の主張:新規事業の重圧と過労によるうつ病
遺族側は、男性が新規事業の責任者として社長からのプレッシャーを受け、期待通りの成果が出せず、強い心理的負荷を抱えていたと主張。休日にも業務連絡に対応するなど、常に緊張状態に置かれていたと訴えました。 さらに、男性の当時の行動や様子から、抑うつ気分、疲労感、自信喪失、睡眠障害など、うつ病の症状が見られたと指摘。厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」に照らし合わせても、強い心理的負荷を受けてうつ病を発症し、自殺に至ったことは明らかだと主張しました。 著名な精神科医である山田先生(仮名)も、「責任感の強い人が、大きなプレッシャーの中で精神的に追い詰められるケースは少なくない。周囲の理解とサポートが不可欠です」と指摘しています。
審査官の逆転判断:心理的負荷を認める
遺族の審査請求を受け、労働者災害補償保険審査官は、男性の死を労災と認定し、監督署の決定を取り消しました。 監督署は2店舗の店長兼務は「合理的で自然」と主張しましたが、審査官は、新規事業の責任者としての重圧や、常に業務対応を迫られる状況を重視。心理的負荷の強度は「強」と判断しました。 これは、近年増加傾向にある過労自殺問題への社会的な関心の高まりも影響していると考えられます。企業は、従業員のメンタルヘルスに配慮した職場環境づくりが求められています。
遺族補償の支給決定:過労死問題への警鐘
審査官の決定を受け、監督署は遺族補償給付の支給を決定しました。これは、過労死問題における大きな一歩と言えるでしょう。 この事件は、私たちに改めて過労死問題の深刻さを突きつけました。長時間労働や過剰なプレッシャーは、命に関わる深刻な問題を引き起こす可能性があります。 一人ひとりが、自身の働き方を見つめ直し、周囲にも気を配ることが大切です。 「過労死110番」のような相談窓口も活用し、一人で抱え込まずに相談することも重要です。
まとめ:働き方改革への意識を高めよう
今回の事件は、企業だけでなく、私たち一人ひとりが働き方改革への意識を高める必要があることを示しています。 ワークライフバランスを重視し、心身ともに健康な状態で働くことができる社会の実現に向けて、共に考えていきましょう。