韓国務安国際空港で発生したチェジュ航空機事故。乗客乗員181名を乗せた旅客機が胴体着陸し、179名もの尊い命が失われました。この痛ましい事故の原因究明が進められていますが、専門家の間では電源喪失の可能性が有力視されています。
バードストライクが引き金か?
事故機の位置情報を送信する航空機追跡システム(ADS-B)のデータが、事故発生直前に途絶えていることが判明しました。ADS-Bは、エンジンが1基でも稼働していれば電力供給を受け作動するため、両エンジンが同時に停止した可能性が高いとみられています。その原因として、鳥類衝突(バードストライク)が有力視されています。
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20年以上の飛行経験を持つ現役機長A氏によると、「ADS-Bはパイロットが意図的にオフにすることすら困難なシステム」であり、データの途絶は機体への大きな衝撃を示唆しているといいます。バードストライクにより両エンジンが停止、電源喪失に至った可能性が高いと推測されています。
電源喪失で制御不能に?
専門家らは、電源喪失によりランディングギア、フラップ、エンジン逆推力、スピードブレーキなどの制御が不能になった可能性を指摘しています。カトリック関東大学航空運航学科のチョン・ユンシク教授は、「エンジンが1基でも稼働していれば、オートパイロット機能やその他の電子機器はほぼ正常に作動する」と述べ、電源喪失が事故の重大な要因となった可能性を示唆しています。
ブラックボックス分析に課題
事故原因究明のカギを握るブラックボックスですが、フライトレコーダーの一部が損傷し、コネクターが紛失していることが判明しました。韓国国内での分析は困難と判断され、米国に送られることになりました。音声記録装置は比較的良好な状態で回収されており、音声ファイルへの変換には2日程度かかる見込みです。
滑走路短縮の影響は?
国土交通部は、事故当時、務安空港の滑走路延長工事のため、北側滑走路が2800メートルから2500メートルに短縮運用されていたことを明らかにしました。滑走路の長さ自体は航空機の離着陸に問題ないものの、事故機が滑走路の3分の1地点から胴体着陸を試みたことを考えると、滑走路の短縮が事故に何らかの影響を与えた可能性も否定できません。また、1回目の着陸失敗後、2回目の着陸を滑走路の反対方向(第19滑走路)で行ったのは、パイロットと管制官の合意に基づくものだったと発表されました。
事故原因の究明には、ブラックボックスの分析結果が不可欠です。今後の調査の進展が待たれます。