下北沢のシンボルとして、数々の著名人が集ったジャズバー「レディ・ジェーン」が、2023年4月13日に惜しまれつつ閉店しました。50年という長い歴史に幕を下ろしたレディ・ジェーン。その軌跡と、オーナー大木雄高さんの想いを綴ります。
多くの著名人が愛した、下北沢の文化発信地
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1975年1月の開店以来、レディ・ジェーンは、故・松田優作さんや中島みゆきさんをはじめ、多くの俳優、歌手、文化人にとって特別な場所でした。約4,000枚のレコードから、その日の雰囲気に合わせて選曲される音楽、映画ポスターで埋め尽くされた55平方メートルの空間は、まさに文化の発信地でした。閉店を惜しむ常連客で連日満席となる中、オーナーの大木さんは「閉店までにやることも多く、まだ感慨には至らない」と語っています。
ジャズ、映画、そして酒。文化の香りに包まれた空間
大木さんは、ジャズ、映画、酒を3本柱としてレディ・ジェーンをオープンしました。大木さん自身が劇団を主宰していたこともあり、自然と演劇関係の若者が集まるようになりました。故・松田優作さんとの出会いも演劇がきっかけでした。映画談義に花を咲かせ、意気投合した二人はすぐに親交を深めたそうです。
若者の憩いの場、そして数々の名曲誕生の秘話
レディ・ジェーンは、若者たちの憩いの場でもありました。松田さんは亡くなる直前まで店に通い詰め、キープボトルを置いたままこの世を去りました。中島みゆきさんもライブで訪れたり、店の名前を冠した曲を作ったりと、レディ・ジェーンに深い愛情を注いでいました。店内には、イラストレーター黒田征太郎さんの絵や、写真家荒木経惟さんの作品も飾られ、常連客の愛着が様々な形で表現されています。
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下北沢の変遷とともに歩んだ50年、そして新たな挑戦へ
レディ・ジェーンの繁栄は、下北沢の発展と軌を一にしていました。しかし、駅周辺の再開発に伴い、建物の賃貸契約更新が認められず、閉店を決断。それでも「文化活動は続ける」と大木さんは力強く語ります。最終営業日の後も、近くの劇場で音楽や朗読を中心としたイベントを計画しており、「50年を総括し、何ができるか考え続けたい」と新たな挑戦に目を向けています。
レディ・ジェーンの灯は消えない
半世紀に渡り、下北沢の文化を支えてきたレディ・ジェーン。その歴史は幕を閉じますが、そこで生まれた数々の物語、そして人々の記憶の中で、レディ・ジェーンの灯はこれからも輝き続けるでしょう。