連邦政府職員の働き方が大きく変わるかもしれません。ドナルド・トランプ大統領は、連邦政府職員に対し週5日のオフィス勤務を義務付ける大統領令に署名しました。この決定は、テレワーク推進の流れに逆行するもので、様々な議論を巻き起こしています。本記事では、大統領令の内容、その背景にある狙い、そして専門家や労働組合の反応など、多角的にこの問題を掘り下げていきます。
大統領令発令の背景と内容
トランプ大統領は、政府職員の生産性向上と、大統領への説明責任の明確化を目的として、この大統領令を発令しました。大統領令は大きく分けて2つの内容を含んでいます。
一つは、全ての省庁の長に対し、在宅勤務制度を終了させ、職員がそれぞれの勤務地でフルタイム勤務することを義務付ける措置を取るよう命じるもの。もう一つは、政府高官の権限は大統領によって委譲されたものであり、彼らは大統領に対して説明責任を果たさなければならないことを強調するものです。
alt トランプ大統領が署名した大統領令
「スケジュールF」の復活と波紋
今回の大統領令で注目すべき点の一つは、「スケジュールF」と呼ばれる雇用区分の復活です。これは政策決定に関わる上級公務員を政治任用とする制度で、トランプ前政権で導入され、バイデン前政権で廃止されていましたが、今回再び導入されることとなりました。人事の柔軟性を高める狙いがあるとされていますが、連邦政府職員の労働組合は強く反発し、すでに差し止めを求める訴訟を起こしています。
専門家や労働組合の反応
専門家からは、今回の措置は不満を持つ職員の退職につながる可能性が指摘されています。これは、トランプ政権の狙いでもあるという見方もあります。例えば、イーロン・マスク氏は、テレワークを「コロナ禍時代の特権」と呼び、その剥奪によって自主的な退職が相次ぐことを歓迎する旨の発言をしています。
一方、連邦政府職員の労働組合は、今回の大統領令に強く反発しています。米国行政府職員連合(AFGE)は、ハイブリッド勤務の制限は優秀な人材獲得を困難にするとして、懸念を表明しています。
オフィス回帰は政府機能に影響を与えるか?
スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(労使問題)は、出社勤務の強制は多くの闘争、解雇、辞職を引き起こし、最終的に政府サービスの質の低下、安全や社会保障の中核の機能不全に繋がる可能性があると警告しています。
alt オフィスで働く人々
テレワークの現状と今後の展望
行政管理予算局(OMB)の報告書によると、連邦政府職員の約46%、110万人がリモートワークの対象となっており、そのうち約22万8000人が完全にリモートワークを行っています。今回の大統領令は、これらの職員の働き方に大きな影響を与えることは必至です。
今後の展開としては、労働組合との交渉、訴訟の行方、そして実際に職員の退職がどの程度進むのかなど、様々な要素が絡み合って複雑な様相を呈していくと予想されます。
まとめ
トランプ大統領による連邦政府職員の週5日オフィス勤務義務化は、テレワーク推進の流れに逆行する大胆な施策です。生産性向上、大統領への説明責任強化といった狙いがある一方で、労働組合の反発や政府機能への影響など、懸念材料も少なくありません。今後の動向に注目が集まります。