中国の新興企業、ディープシークが開発した生成AIが大きな注目を集めています。中国政府はこの国産AIを大々的に宣伝し、米国勢に対抗できる「AI強国」の実現に向けた切り札として期待を寄せています。果たしてディープシークは中国のAI戦略を成功に導くことができるのでしょうか?この記事では、ディープシークの現状と中国政府の思惑、そしてその未来について探ります。
ディープシーク:中国AI開発の希望の星
中国共産党機関紙・人民日報は、ディープシークの生成AIが春節期間中に国内外で大きな話題となったと報じ、中国が米国のオープンAIの模倣から、追い越しをかける段階に入ったと専門家の意見を引用しました。国営新華社通信もディープシーク関連の記事を多数配信し、政府による強力な後押しが感じられます。
ディープシークが入居するビルには、多くの見物人が訪れている(1月29日、浙江省杭州で)=山下福太郎撮影
ディープシーク創業者の梁文鋒氏は、李強首相との座談会にも出席し、AI開発に関する意見交換を行いました。この議論の内容は、3月の全国人民代表大会(全人代)で発表される政府活動報告に反映される可能性が高く、ディープシークの成功を国家戦略に組み込む意図が伺えます。
政府のAI戦略「AIプラス」とディープシークの役割
中国政府は、昨年発表した産業育成策「AIプラス」の中でAI技術の発展を国家の重要課題として掲げています。米国に比べて1~2年遅れているとされる中国のAI技術ですが、ディープシークの登場は、安全保障や経済成長に不可欠なAI分野での巻き返しを図る上で大きな希望となっています。AI技術コンサルタントの李偉氏(仮名)は、「ディープシークは中国独自のAI技術を確立する上で重要な役割を担っており、その成功は中国のAI産業全体の活性化につながるだろう」と述べています。
注目される創業者の経歴と浙江大学の存在
ディープシークの創業者、梁文鋒氏は中国トップレベルのAI研究機関である浙江大学大学院の出身です。浙江大学は習近平国家主席が浙江省トップを務めていた時代に重点的に視察しており、優秀な人材育成と技術革新の重要性を強調していた場所でもあります。
社員の平均年齢は30歳以下⁉…ディープシークの主要メンバー
梁氏の故郷では、春節の帰省時に「故郷の誇りと希望」と書かれた横断幕が掲げられるなど、国民的英雄として扱われています。浙江大学を訪れたある母親は、「梁さんは中国の誇り。息子にもここで学んでほしい」と語っており、若者にとってのロールモデルとなっています。
ディープシークの未来:中国AI強国の夢を背負って
ディープシークは中国政府の期待を一身に背負い、AI強国実現の夢を追い求めています。今後の技術開発や世界市場への進出など、多くの課題が待ち受けている中で、ディープシークがどのような成長を遂げるのか、世界中から注目が集まっています。中国のAI戦略の行方は、ディープシークの成功にかかっていると言えるでしょう。