不登校:子どもたちのSOSを見逃さないために。保護者・教師が知っておくべき対応策

学校に行きたくても行けない子どもたち。文部科学省の調査で過去最多の不登校児童生徒数が明らかになり、社会全体で改めてこの問題に向き合う必要性が高まっています。子どもたちのSOSを見逃さず、適切なサポートをするために、保護者・教師が知っておくべき対応策を、東京学芸大学教育学部の松尾直博教授の著書『新時代のスクールカウンセラー入門』(時事通信社)を参考に、分かりやすく解説します。

不登校の背景にある要因を探る

不登校の理由は一人ひとり異なり、複雑に絡み合っているケースも少なくありません。大きく分けて、具体的な要因が特定できる場合と、心身の不調が影響している場合があります。

具体的な要因への対応

いじめや友達とのトラブル、先生との関係、学習の困難など、具体的な要因が特定できる場合は、その要因を取り除くことが重要です。

例えば、いじめであれば、学校全体でいじめ撲滅への取り組みを強化し、被害を受けた子どもへのケアを徹底する必要があります。先生との関係が問題であれば、他の先生やスクールカウンセラーを交えて話し合い、解決策を探ることが大切です。学習の困難であれば、学習支援や個別指導などで学ぶ喜びを取り戻せるようサポートすることが重要です。

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これらの具体的な問題が解決されれば、子どもたちは安心して学校に通えるようになる可能性が高まります。すぐに教室に戻るのが難しい場合でも、保健室登校や別室登校など、段階的に学校生活に慣れていくためのサポートが必要です。

心身の不調への対応:見逃せないSOS

朝起きられない、立ちくらみがする、だるい、頭痛がするなど、心身の不調を訴える子どもたちもいます。これらの症状は、起立性調節障害(OD)などの身体疾患や、うつ病、不安症などの精神疾患が隠れている可能性があります。

起立性調節障害は、自律神経の乱れによって引き起こされる身体疾患で、思春期に多く見られます。「怠けている」「仮病を使っている」などと誤解されやすく、適切な治療を受けられないまま不登校になってしまうケースも少なくありません。

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その他にも、低血圧、低血糖、甲状腺機能低下症、片頭痛、睡眠障害、過敏性腸症候群など、様々な身体疾患が不登校の背景にある可能性があります。

精神疾患も、不登校の要因として見逃せないものです。うつ病、双極性障害、不安症などは、専門的な治療が必要となる深刻な病気です。

身体疾患、精神疾患ともに、診断は医師の専門領域です。学校や家庭で異変に気づいたら、早めに医療機関を受診することが大切です。

子どもたちの未来を守るために

不登校は、子どもたちからのSOSです。その声に耳を傾け、適切なサポートをすることが、子どもたちの未来を守ることへと繋がります。保護者、教師、スクールカウンセラー、医療機関など、関係機関が連携し、子どもたち一人ひとりに寄り添った支援体制を構築していくことが重要です。

子どもたちのSOSを見逃さないためにできること

子どもたちが安心して学校生活を送れるように、家庭や学校でできることはたくさんあります。日頃から子どもとじっくり向き合い、些細な変化にも気づけるよう意識することが大切です。
例えば、「最近元気がない」「朝起きるのがつらいと言っている」「食欲がない」などのサインを見逃さず、声をかけて話を聞いてみましょう。
また、学校では、子どもたちが安心して相談できる環境づくりが重要です。スクールカウンセラーや養護教諭などの専門家と連携し、早期発見・早期支援に努めましょう。

専門家からのアドバイス:(架空の専門家)

子どものメンタルヘルスに詳しい臨床心理士の山田先生は、「不登校は、子ども自身の問題ではなく、環境との不適合によって生じるSOSサインです。周囲の大人が、子どもたちの気持ちに寄り添い、安心して過ごせる環境を整えることが大切です」と指摘しています。