韓国の東海(日本名・日本海)に眠るといわれた巨大ガス田「シロナガスクジラ」。莫大な資源埋蔵の可能性に、一時は韓国経済に明るい未来をもたらす夢の資源として注目を集めました。しかし、最初の探査ボーリングの失敗により、その期待は大きく揺らいでいます。本記事では、シロナガスクジラ・プロジェクトの経緯、そして今回の失敗が意味するものについて、詳しく解説します。
尹大統領の発表と高まる期待
2024年6月、尹錫悦大統領は突如として記者会見を開き、東海に最大140億バレルの石油とガスが埋蔵されている可能性が高いと発表しました。この発表は、当時総選挙敗北後の支持率回復を切望していた尹大統領にとって、起死回生の切り札となることが期待されていました。最大29年分の天然ガス、4年以上分の石油、サムスン電子時価総額の5倍に相当する経済効果…、政府関係者からは興奮の声が漏れ聞こえ、国民の期待も大きく膨れ上がりました。
尹大統領の記者会見の様子
専門家の懸念と政治的思惑
しかし、資源開発の専門家からは当初から慎重な声が上がっていました。韓国石油公社は2023年2月の時点で、シロナガスクジラから得られる石油・ガスの価値は約11兆ウォンと試算していましたが、掘削コストを上回る可能性も指摘されていました。にもかかわらず、尹大統領の発表時には埋蔵量の予想値が大幅に上方修正され、最大2000兆ウォンに達する規模とされました。この急激な変化に、業界関係者からは疑問の声が上がっていました。
資源開発の難しさ
石油ボーリング事業は、成功率が非常に低いことで知られています。シロナガスクジラのボーリング成功率もわずか20%とされており、複数回の試掘が必要となることは当初から想定されていました。しかし、政府は希望的な予測を性急に発表したことで、事業への疑問や政治的な論争を招いてしまったのです。
東海ガス田のイメージ図
1回目のボーリング失敗と今後の展望
そして2025年、最初の探査ボーリングは失敗に終わりました。産業通商資源部は「政務的な影響が多く介入した」と説明し、大統領府など政界の責任を暗に示唆しました。仁荷大学のカン・チョング招へい教授は、「科学とデータに基づいて冷静に進めるべきだった」と指摘し、政治的思惑がプロジェクトに悪影響を与えたことを示唆しています。
夢の資源は幻か?
今回の失敗は、シロナガスクジラ・プロジェクトの将来に暗い影を落としています。国民の期待を裏切っただけでなく、巨額の費用が無駄になった可能性も懸念されています。今後の探査ボーリングが実施されるか、そしてプロジェクトが継続されるかは不透明な状況です。シロナガスクジラは、韓国経済に繁栄をもたらす夢の資源となるのでしょうか、それとも政治的幻想に終わってしまうのでしょうか。今後の展開に注目が集まります。