小学生の列に車で突っ込み、電車内で包丁を振り回す…「非モテの独身男」による無差別殺傷事件がこれから増えるワケ


 「全てが嫌になった。人を殺そうとして車で突っ込んだ」
「苦労せずに生きている人が嫌だ」

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 大阪市西成区で小学生の列にレンタカーで突っ込んで殺人未遂の疑いで逮捕された矢沢勇希容疑者(28)は、警察の取り調べに対して、自身の不遇や社会に対する不満とも取れる趣旨の話をしているという。

 あまりに身勝手な言い分に怒りが込み上げる人も多いと思う。だが、通り魔や猟奇殺人などさまざまなタイプの犯罪者の話を聞いてきた経験から言わせていただくと、「はいはい、いつものやつね」と思ってしまうほど、あまりにベタな「犯罪者の主張」である。

 若いとき、事件記者や実話誌編集者をやっていた関係で、いろいろなタイプの犯罪者に取材をしたが、そこで多くの人に共通していたのは「強烈な自己愛と被害者意識」だ。

 「人生に絶望した」「死刑になりたい」などと口走る犯罪者に限って、実際に会ってみると自分がマスコミでどう報じられているかとか、量刑がどうなるかなどを気にしていた。しかも、「ああ、自分のことが好きで好きでしょうがないんだな」と感じてしまうほど、子どもっぽい「自分語り」が多い。

 とにかく自分がこれまでの人生でいかに不遇で、事件を起こした後も警察やマスコミからひどい人権侵害を受け、拘置所や刑務所でも酷い扱いを受けているのかを切々と訴え、世界中の不幸が降りかかっているようなことをアピールする。そして、そんな自分の繊細な心を傷つけ、不当に貶める世の中への怒りや憎しみを募らせる、というパターンが圧倒的に多いのだ。

 実際、日本中を震撼させたある凶悪事件の犯罪者もそうだった。

 「いやいや、あなたがやったことで今も苦しんでいる人たちがたくさんいるんですよ」ということも告げても、「それはそれ、これはこれ」という感じでまったくピンときていない。映画やドラマで見かける、「被害者への謝罪と反省の日々」のかけらも感じられない、とにかく「自分、自分、自分」なのだ。

 そういう「強烈な自己愛と被害者意識」は今回の被疑者にも見られる。なんの罪もない小学生の命を躊躇なく奪おうと思ったのは、「人生に失望して、かわいそうなオレ」で頭がいっぱいで、それ以外の人間の命などどうでもよくなっているからなのだ。

 そこに加えて、今回の容疑者の供述を聞いて、個人的に感じるのは、「典型的なインセル犯罪者だな」ということだ。

 インセルとは「Involuntary celibate」(不本意の禁欲主義者)の略。もともとはネット上で使われていた用語で、「イケメンでもなく、経済的に裕福でもないため、女性と深い関係になれない男性」を指す。要するに「非モテの独身男」だ。

 ご存じの方も多いだろうが今、そんな「非モテの独身男」による無差別殺傷事件が世界的に増えている。主に欧米の先進国で「インセル」を名乗る人々が、車で歩行者を次々と跳ねたり、銃を乱射したりする事件が続発している。

 そんな「インセル犯罪者」の犯行動機のひとつが、「自身の不遇や社会に対する不満」だ。世間では「女性にモテない」というと、「それはお前の努力が足りないからだろ」となるが、インセルたちは「イケメンや金持ちになびく女性が悪い=こういう不公平な構造をつくった社会が悪い」と考える。

 この傾向は日本でも見られる。例えば、2021年には小田急線の車内において36歳で無職の男が20歳の女子大生に包丁で襲い掛かり、複数の乗客も切りつけた。このときも犯人は社会や女性への憎悪を口にしている。



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